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【ここでエッセイを書く前に、あなたにはほかに、やるべきことがあるはずです】

助けて、助けて、助けて。

頭のなかで、誰にともなく呟きながら、ぐるぐると旅先の寺を歩き続けた。縁もゆかりもない寺の神様が助けてくれるわけもないのに、ほかにすがれるものがなく、ひとり泣きながら新緑とツツジが彩る庭園を徘徊した。
2022年4月6日、私は、損なわれた。

本記事には、性暴力を想起させる描写が含まれております。読み進めるかどうかのご判断は、各自でお願いいたします。
また、悪質な嫌がらせが持続的に多発しているため、自身の安全性を考慮し、高額の有料ウォールをかけさせていただきます。現在私が係争中の相手方と近しい方や、相手方と関わりのある同職としか思えない方が、こちらの記事をわざわざ購入した場合には、「明確な嫌がらせによる心理的攻撃」と判断し、即座に担当弁護士さんに相談の上、然るべき対処を取らせていただきますので、その旨ご了承ください。
(有料マガジン記事において、すでに上記の行為が散見されているため、このような記載をした次第です。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。)


ひとり旅をしよう。
そう思い立ったのは、今年の3月頃だった。解離の症状が軽快し、経済基盤が整ったことが決断を後押しした。何より、「自分のような過去があっても、人生を楽しんでいいんだ」と思えたのが大きかった。

これまでほとんど旅をしたことがなく、まともなひとり旅に至っては初めての経験だった。滞在予定の旅先を幾つかピックアップし、その中から6つの土地を行き先に選んだ。それぞれの土地で、文章を通して知り合った友人たちと会う約束をしていた。旅そのものもさることながら、友人たちと対面で会えることを、心から楽しみにしていた。

友人のひとりは、異性だった。でも、私はその人を心から信頼していた。その人は、私のnoteやメディアの記事を2年以上にわたり熟読してくれていた。いくつかの記事にはサポートをもらったこともある。添えられたメッセージはどれも温かいもので、思いやりにあふれていた。zoomでも何度か顔を見ながら、対話と食事を楽しんだ。よき友人であり、書き手仲間だと思っていた。だから、「家飲みしよう」と誘われても、何ら危機感を抱くことはなかった。

「友達だし、ここ(私と自分を交互に指差しながら)そういう関係じゃないじゃん?だから信用してくれていいよ」

zoomで話したとき、そう言ったその人の言葉に、嘘はないように見えた。これまでも、文章を通して知り合った異性の友人と自室で2人きりで話したり、食事をする機会はあった。だが、「性虐待サバイバーである」私の過去を知る友人たちは、誰ひとり例外なく、「友人」としてのボーダーラインをきっちり守ってくれた。私はそれが「当たり前」だと思っていた。たとえ私が、性虐待におけるサバイバーではなかったとしても。

「仮に家に泊まったとしても、一緒にお酒を飲んだとしても、性的同意にはあたらない」

このような性的同意の基礎知識を有していない人が、私の過去を知り、文章を読み、「これまでよく生きてきましたね」などと言ってくれるわけがない。そう、思っていた。

ここまでを読んでくれた人は、もう結果を察しているだろう。ご想像通り、私はその人に行為を迫られ、最終的に挿入された。挙句、避妊すらしてもらえなかった。この事実を「性暴力を受けました」と書くと、名誉毀損に当たるらしい。性暴力は犯罪である。でも、立証されなければ、それは犯罪として認められない。だから相手は、何の罰も受けていない。笑ってしまう。この国の司法は、被害者のために存在しているわけではないらしい。

往復数万円の交通費と宿泊費をかけてまで、現地にある警察署へ赴いた。しかし、私がそこで受けた対応は、二次加害の嵐だった。

「下着を脱ぐとき、自ら脱ぎやすいように腰を上げましたか?腰を上げない大人の下着を脱がすのは、相当大変なはずなんですけど」
「挿入時、陰部は濡れていましたか?」
「すんなり入りましたか?」

私の過去の被害、父親からの性虐待については、事前に警察にも伝えていた。その被害の後遺症で、男性に対し強く拒絶をすることができない(強く拒絶すると殴られ、蹴られ、煙草で焼かれた経験があるため、思考が凍りつく)旨も伝えてあった。それでも、上記のような質問に加え、何度も何度もこう聞かれた。

「なぜ逃げなかったのですか?なぜ抵抗しなかったのですか?」

たまりかねて、「性虐待を受けてきたから、抵抗することは死を意味するほどの恐怖なのだと何度も言っていますよね?!」と声を荒げた。すると、担当の警務課の方は、冷めた表情でこう告げた。
「それでも抵抗の有無を確認するのが、こちらの仕事ですので」

過度なストレスに耐えられず、私は取り調べ室で過呼吸を起こし、救急車で搬送された。その後、付き添ってくれていたパートナーが警察に問い合わせたところ、「被害届は受けつけられない」と言われた。理由は、明確な拒絶がないこと。また、過去のトラウマがあるとはいえ、「重度の精神疾患には見えない」ことが、被害届不受理の理由だそうだ。

私の病名は解離性同一性障害と双極性障害で、障害年金2級を受給、障害者手帳2級を有している。解離発作が起きれば記憶は欠如し、悪夢やフラッシュバックで発狂することもある。それでも私の病は、私の苦しみは、「軽度」であるらしい。
悔しさのあまり電柱を殴りつけたパートナーの拳は、数日にわたり腫れ上がった。日頃自分の感情を強く表に出さない人が、このときばかりは声を上げて泣いた。泣きながら私を抱きしめ、「死なないで。何もしなくていい、何もがんばらなくていいから、死なないで」と、そう言った。

後日、私と彼はどうにか気力を振り絞り、現場のアパートを訪れた。刑事がダメでも民事がある。しかし、民事訴訟を起こすにしても、民事交渉するにしても、「正確な住所」が必要だった。建物の住所までは判明していたが、部屋番号を覚えていなかった。そのため、本人に「民事訴訟を考えています。内容証明を送りたいので住所を教えてください」とDMしたところ、あっさりとブロックされた。よって、現地に行って記憶を掘り起こすしか術がなかった。

ブロックされる前、相手からLINEで謝罪文を受け取っていた。一切心のこもっていない謝罪文。償うつもりなどさらさらない、うわべだけの謝罪。「ブロック」で逃げきれれば、民事訴訟を起こされることもないと思ったのだろう。反吐が出る。

見覚えのある建物を見ただけで、強烈な吐き気が込み上げた。自分の体を、どの順番でどのように触られたか、どんな卑猥な言葉をかけられたか、否応なしに記憶があふれる。
「パートナーさんと遠距離ならずっとしてないんでしょ?寂しいんじゃないの?」とにじり寄られた恐怖。避妊なしで突然挿入された絶望。
漏れそうな悲鳴を無理矢理飲み下し、記憶を掘り起こし、部屋番号を特定した。目的達成後、ふらつく私を支えながら、パートナーは素早くその場を離れた。
「よくがんばった」
そう言ってくれた声は、どこまでも必死だった。尊厳を取り戻したい。償ってほしい。私たちの願いは、ただそれだけだった。

その後、パートナーが信頼に足る弁護士さんを探し出し、二人で事務所へ相談に伺った。評判通り、いや、それ以上に親身に話を聞いてくれて、痛みに寄り添ってくれる先生だった。
先生の助言を受け、訴訟ではなく交渉からはじめることにした。訴訟を起こすと、相手方に本名が開示されてしまう。それを防ぐためにも、交渉からはじめましょう、と進言された。

しかし、そこからが長かった。相手方に内容証明を送り、2週間待った。ようやく届いた回答書は、あまりに酷い内容だった。私がショックを受けるかもしれないと弁護士さんが気を回してくれて、まずは先にパートナーに内容を確認してもらったほどだ。すべてを載せるわけにはいかないが、ざっくりいうと「部屋に入っているのだから合意ですよね?」「避妊してないと言っても膣内には射精していませんよね?」みたいな内容だった。

「膣外射精を『避妊』だと本気で思ってんなら、小学生に戻って性教育やり直してこいよ!!」

思わずそう叫んだけれど、私の声はどこまでも塞がれ、届かない。ちなみに、膣外射精の妊娠確率は、およそ20%である。万が一にも私が妊娠していたら、あの人はどうするつもりだったのだろう。そのときも、LINEにあったような“お気持ち構文”を繰り返したのだろうか。
「申し訳ありませんでした。辛い思いをさせた上に、こうして伝えてくださりありがとうございます。」と。

「ありがとう」ってなんだよ。ありがとう、って、なんだ。

相手方の回答書に、弁護士さんもひどく憤ってくれた。そして、“これ以上は無理だろう”というほどに丁寧な回答案を作成してくれた。
3週間ほど前に、相手方にその文書は届いているはずだ。それなのに、未だなんの回答も得られない。

反省なんて、欠片も持ち合わせていないようだ。なぜそう言い切れるかといえば、その間にも相手方は、淡々とnoteでエッセイを更新し続けているからである。日常の気付き、家族への愛にとどまらず、「過去と決別する」だの「自分の歩みは誰にも止められない」だの、私が読めば相当なダメージを食らうことが容易に想像できるだろう文面が、幾つも並んでいる。

事が起きた翌日、4月7日のnoteさえ、削除してもらえない。「合意だった」と盛大に勘違いした上で書かれた文面。あのエッセイが公開され続けることで、私がどれほどの苦痛を被るかがなぜ理解できないのだろう。
この機会だから言っておく。私はあの日、あの夜、寝たふりをしながら一睡もせず、ひたすらに朝がくるのを待っていた。
早く朝になれ、朝になれ、朝になれ。
そう念じながら、窓の外が白みはじめるのをじっと待ち続けた。声を殺して泣くのは慣れている。でもあの日は、窒息しそうだった。いっそこの男を殺して自分も死ねばいいんじゃないか。そのほうがいい。何度も、何度も何度も、そう思った。私にとってあの日、「朝がくること」は「希望」だった。ようやくあの地獄みたいな部屋から出られる、「希望の朝」だったのだ。シーツに残った温もりを感じて哀愁に浸られる覚えなどない。あなたとの性行為なんて、私はほんの欠片ほども、望んでいなかった。

名前を出して告発するか、迷った回数は数えきれない。でもそのたびに、相手のお子さんの気持ちを考え、踏み止まった。インターネット時代において、子どもが親の名前を検索することはさほど珍しくない。自分の父親の名前を検索して、万が一にも「性加害者」というワードが出てきたら、子どもはどんな気持ちになるだろう。どれほど傷つくだろう。そう思うと、燃えるような怒りは、絶望的な悲しみへと姿を変えた。

同じような理由で、慰謝料は100万円の請求にとどめた。本来ならば、500万円払ってもらっても全然足りない。すでに現段階で、この件が起きて以降、心身を崩して失った仕事の損害、病院費、警察までの交通費と宿泊費、弁護士さんへの依頼金などで、総額100万円をゆうに超える貯金残高を失った。しかし、相手に子どもがいる以上、そこには教育費がかかる。親の資産は、子どもの選択肢の幅に直結する。
本来、私がそこまで考えてやる義理はない。でも、ろくでもない親に育てられた弊害で苦しむ辛さを、誰よりも知っている。相手のことは憎い。でも、子どもたちに罪はない。

とはいえ、そんな私の忍耐も、さまざまな要因が重なり、ついにリミッターを超えた。


その発言に配慮はありますか。それを言われた私の気持ちが、本当にわかりませんか。

被害後、そう問いただしたくなる言葉が、近しいところからあらゆる角度で浴びせられた。「加害の認識を持たれない」加害。私はそれに、「痛いのでやめてください」と言うことさえできない。疲れた。もう、疲れた。

これを読んでいるなら、答えてください。
もしも私が死んだら、それでもあなたは、「申し訳ありませんでした」で済ませるのですか。「伝えてくれてありがとうございます」と呑気に言うのですか。
私とパートナーが、この件でどれほど傷つき、疲弊し、どんなに多くのものを失ってきたかわかりますか。彼が何度涙を流し、どれほどの苦渋を飲み込んでいるかわかりますか。私たちの痛みが、あなたには本当にわかりませんか?

私には、大切な息子たちがいます。パートナーがいます。血はつながっていないけど、娘もいます。友人たちもいます。私はその人たちを、傷つけたくない。大切にしたい。だからどうにか、ぎりぎりのところで踏みとどまっています。
でももう、本当にぎりぎりなんです。際に立っているんです。

読んでいるならどうか、償ってください。己のしたことに向き合ってください。あなたは私の過去を熟知した上で、「何もしない」と、「友達だから」と言って私を誘い出した。その時点で、「合意なんてあるわけない」んです。その事実から逃げないでください。

父にされたこと。あなたにされたこと。
あなたは「違う」と言うかもしれませんが、私からしたら「同じ」です。同じなんです。

返してください。私が失ったもの、損なわれたものを、どうか、返してください。
私とあなたのかつての共通フォロワーは、100人を超えます。その背景を鑑みた上でも、ここでエッセイを書く前に、あなたにはほかに、やるべきことがあるはずです。

***

※2022年10月18日、追記※

本記事を公開して、すでに3日が過ぎました。残念ながら、現段階で相手方からは一切反応がありません。ブロック前の共通フォロワーが100人を超えていたことからも、未だこの発信に気づいていないとは到底考えにくいです。

弁護士さんを通して「アカウント削除」をお願いしているにも関わらず、それに応じないばかりか、私がもっとも苦痛を感じている4月7日のnoteさえも削除してもらえません。
また、本日「相手方が裏アカウントを作成している」事実を知りました。その中のとある記事に、こんな一節がありました。

怖いものだなと思う。
他愛もなく悪人へと仕立て上げることも可能だから。

これを読んだ瞬間、相手方のお子さんの気持ち、立場を考え、必死に堪えていたものが決壊する音がしました。
担当弁護士さんに相談の上、告発・訴訟も視野に入れて、厳罰を求める方向に舵を切りたいと考えています。私はもうこれ以上、自身の尊厳とほかの何かを天秤にかけ、前者を投げ捨てる真似はできそうにありません。

私のこの判断をどう感じるかは、人により様々でしょう。すべての人に理解されるとも、共感を得られるとも思っていません。それでも、私は「自分を粗末にしない」と決めました。

彼の家庭は彼の家庭。
彼が起こしてしまったことについて、考えて、家庭をどうするかを話し合うのは彼の家庭内で行われること。
はるさんは、自分の心を一番に考えてほしいです。

友人がくれた、私の命をつないでくれた言葉です。
私は私の心と尊厳を、一番に優先します。


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。 頂いたサポートは、今後の作品作りの為に使わせて頂きます。 私の作品が少しでもあなたの心に痕を残してくれたなら、こんなにも嬉しいことはありません。