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卍やる事ねぇから金髪にしてやったわ卍

 初めてインナーカラー、というものをしたあの4年前の話をしよう。

 憧れだったインナーカラーをしたあの日の私は、深い傷を負い、心に穴が開いていた、雨の日だった___。

 おっと、そこの君、めんどくさそ、やーめっぴ!と思わないで(゚ω゚)
 別に重い話とか始まらないから、てきとぅーに読んで下され。

 大学一年の春先。私は部活にバイトに精を出す、(まだ)やる気と希望に満ち溢れた芋っぽい19歳でした。髪色といえば、憧れのミルクティーを目前に、入学式は落ち着けという母からの圧と未知なる行為、ブリーチへの恐怖を理由にしり込みしてとりあえず染めた何の変哲もない茶色。

  アルバイトしていたのは某有名カフェチェーン。髪色はトーンの指定まであり、当分インナーカラーは無理そうなんて思いながら、大学入学と同時にはじけてブリーチをかました友人を羨望の眼差しで見ていたのを覚えています。
 
 そんな私のそれなりに楽しい大学生活の第一歩目ともいえる生活に、2つの問題が生じます。
 ここから少しヘアカラーとは関係ない話にそれますが、絶対に戻ります。
 インナーカラーと私の話に戻るので少しだけお付き合いを。
 
 問題その1 私、死ぬほどバイトができない
 人生初アルバイトだった私はバイト選びも目に飛び込んできた知っている求人に時給も見ずに応募し、自分の適性や好き嫌い、バイト先の口コミも知らずあれよあれよと勤務スタート。
 そんな私は1か月も経たないうちに悟りました。
 まーあ全然仕事ができない。仕事は遅いわ、覚えは悪いわ、やらなくていいことをしてやってほしいことができない。メニューが全く覚えられず、覚える努力の方法もわからず。
 見るも無残。
 極めつけはバイト先のイケメンがお湯を運んでいるときにぶつかり、こぼして彼にかけ、ものすごい作り笑顔を向けられ「もう、奥行っといてな!!!」と言われ。
 客来るな!仕事生まれるな!と思いながら時間を殺していました。

問題その2 部活で負傷しギプスを装着する
 大学デビューの一環で、割合攻撃的な運動をするサークルに所属してみたところ、チームメイトと試合中に接触し、右くるぶしあたりの骨がイってしまい、全治数か月。歩くことも困難なほどの激痛。タクシーに乗せられ病院へ。がっちりとギプスをはめられ、数か月間部活動停止になってしまいました。
 週二日の部活動が主な楽しみだったうえに、大学生活の出鼻ならぬ出足を完全にくじかれ、私はすっかり家に引きこもる以外の選択肢を奪われてしまいました。
 部活動に参加するためにはグラウンドに赴かなければならず、たとえたどり着いたとしてもプレーしている皆を眺めながら歩かなくてもできるマネージャー業務をこなすことしかできません。
 
 これが大学入学2か月目に私の状況でした。

 しかし、災い転じて福となす。
 足をやってしまった私が長時間の立ち仕事であるカフェのアルバイトに出勤することは不可能でした。私は、怪我という圧倒的大義名分のもと、大嫌いだったカフェのバイトを退職することができました。(勤務期間 約2か月)
 必然的に私はアルバイトを失うと同時にある権利を手に入れました。

 そう、髪を自由に染める権利です。
 やっと戻ってきましたよ皆さん。お待たせしました。
 
 そのころ、私の中の中二病があることを実行したがっていたのです。
 ____ある青年はずっとプロを夢見てボクシングを続けてきた。同級生たちが年頃になりオシャレや恋愛にうつつを抜かす中、全ての欲を断ち、己が拳を磨き、汗を流し、自分を追い込んで追い込んで……。
 そんな彼を悲劇が襲う。
 不慮の交通事故によって彼の伝説の右手が真っ白なギプスに包まれることになる。失意の彼はボクシングから離れてしまう。
 全く顔を出さなくなっていたジムに久々に現れた彼を見て、ボクサーたちは言葉を失った。
 彼の怪我をしていない方の左手はセクシーな美女の腰に回され、彼女の見つめる彼は 
 髪を真っ赤に染めていたのだ。彼の無欲と精神の象徴だった黒髪は一本も見当たらない。失意の炎がそこに燃えているのだ。
 彼はおもむろに、投げやりにこう言った。
「腕やっちまって、ボクシングもできねぇ俺は空っぽだ。何にもすることもねぇし、しばるもんもねぇからよぉ、髪染めてやったぜ」

 そう、これだ。この『気だるげ悲観的ヤンキー染髪ムーブ』をかませる条件が今の私にはそろっている。
 やるっきゃない。私はバイトをやめた喪失感はないし、もともとやめたかったからちょうどいいし。部活も彼のボクシングほど精神を傾けてはないけど。
 昔から憧れてたしこういうの。眼鏡外したら美少女とかに年甲斐もなくときめくし。
 ノリと勢いに任せ、私は価格を主に重視し○ットペッパービューティで手頃なサロンを探し、突撃。
 念願のブリーチは思ったよりも痛かった。
 頭皮なんかスースーする?ん、ちげぇわこれいてぇんだ。と気がついた途端に耐え難い。
 なんとか耐え難きを耐え、私の髪の内側はまっきんきんに。ミルクティーカラーをぶちこんでもらい、ほくほくと帰りました。
 周りからの反応も良く、以来少しいかつい人間扱いを受けることも多々ありましたが、おろしても巻いても結えても髪型にアクセントが付いてとても楽しかったです。
 一時はどうなるか。もう何も楽しいことしばらくできないのでは?と思っていた大学生活。
 でも怪我をきっかけに手に入れた新しい自分はとても気に入っていました。そこからしばらくいろんな色を入れて、思う存分4年間、私は私を飾りつけて遊び、さまざまな自分に出会えました。
 私のインナーカラーは気怠げヤンキーのようにアンニュイではありませんでしたが、自分の人生でもして良かった決断だなと思います。
 自分を変えることで得られるもの、災いに見えることの活かし方。
 そんなものに出会えた気がします。
 フリーランスとかになったらまた髪で遊びたいな。


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