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おすすめの書籍

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読んだ本の中で、「これぞ!」という書籍のレビューをまとめています。
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記事一覧

本01  『臨床とことば』(著:河合隼雄×鷲田清一)

あなたが最近聴いたことばはなんですか? 目の前にたしかにいるはずの人に、ことばを尽くしてもつくしても、到底伝わらない感覚。 あるいは、伝わったとたしかに思ったはずなのに、 あとで全く伝わっていなかったことがわかったときの絶望感。 あなたは、ことばの難しさを感じたことがあるだろうか? この本は、そんなことばにまつわる人と人の交わりについて、リアルな生の現場で何が起こっているのか、 そして、そこから派生して世界の、人間の仕組みについて、2人の臨床家の「ことば」を聴ける

本02 『人生のほんとう』(著:池田晶子)

真面目に不真面目のすすめ。 26歳になる頃、私は一日の大半を布団の中で過ごしていました。 人生で2度目。 一度目は、銀行を退社したものの、5時に起きる習慣がぬけず、朝目覚めてからさしてやることもやりたいこともなく、布団にくるまっていた頃。 そして、コンサルティング会社でのハードなプロジェクトに燃え尽き、「留学を目指します!」といって退職後、実家に引きこもった折が2度目である。 健康で経済的に余裕があった両親がいたからこそ。困らせたのはこの2回きりではないが、両親もさぞ「ど

本03 『愛する歌』(作:やなせ・たかし)

声に出して味わうことを教えてくれる 「ーなにがきみのしあわせ、なにをしてよろこぶ わからないまま おわる そんなのはいやだ! ー時ははやく すぎる 光る星は 消える  だから きみはいくんだ ほほえんでー」 女子校時代の休み時間、アンパンマンのマーチを口ずさむ同級生に、その奥深さを熱弁された記憶があります。 それからというものの、やなさ・たかしさんは、もっぱら気になる存在である。 不安や不満がひたひたとおそってくるとき、アンパンマンのマーチを口ずさむと、まさに、アンパンマ

本04 『子育ても 料理も 科学も 遊んじゃおう 暮らしのなかの学びあい』(著:曽田蕭子)

ただ「かたる」だけでいい 私は、”女子校”という女性の多い、あるいは女性の意見が優先されがちな環境で育ちました。 そのため、つい女性、に肩入れしがちな傾向があると自覚している。 もちろん、ファシリテーターとして、場に立ち、ファシリテーションをするとき、無自覚に、あるいは意図を持たずに、何かに反応し場にインパクトを与えるのは、NGなことです。ひとりひとりが、DNAが異なり、身体が異なり、育った環境が異なり、言葉が異なり、あらゆる違いをもって存在している。「女性」、「男性」な

本05 『木のいのち 木のこころ <天>』(著:西岡常一)

先生が教えたかったこと 「『木のいのち 木のこころ』がおすすめです」 大学で金融の授業をとっていたときに、外部の先生が、出張授業で来てくれたことがありました。堂々たるキャリアがレジュメに記載されていて、勝手に年齢を重ねた男性だと思っていたところ、実際は、40代前半だろうかお若い先生でした。 残念ながら、お名前を忘れてしまって記憶も曖昧だが、チノパンに綺麗な色のシャツを着て短髪に清潔感を漂わせながら、キャリアからは想像もつかないほど、(あるいはだからこそか)あっけ

本06 『ムナーリのことば』(著:ブルーノ・ムナーリ 訳:阿部雅世)

子どもの魂に向けた本 振り返ると、私は幼少期の頃からこれまで、「それが“常識”だ」と伝える大人の存在に反抗的でした。そして、そんな彼らに反論をぶつけてみても、ちゃんと聴いてくれない、あるいは、流されている、あるいは後になって、意見を翻されることがよくあり、ふつふつとさらに反抗心を燃やすことがよくありました。 このままだとどうやら埒があかないらしい、と自分の中を見つめたり、それこそ心理や関係性の学びを重ねてきたのでした。 しかし、まだまだ自分の中に、反抗児はいるし、きっと死

本07 『世界の中にありながら世界に属さない』(著:吉福伸逸)

すべて「胡蝶の夢」である 2014年の折、池田晶子さんの本を読んでいた同時期に、読んでいた本がある。 本屋で、心理学系の本棚をぶらぶらしていたときに見つけた本だった。「◯◯療法」「◯◯学」といったタイトルで分厚く難しそうな本の中に、無駄のないフォントで書かれた背表紙が美しく目を引いた。 この著者である吉福さんと池田さんの著作に共通して感じる点としては、みずから探究し尽くした境地と、シンプルで強い表現、そして、けして読者に依存させない書き味かもしれない。 そう書いていて、中