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焼きギンナンの思い出【シロクマ文芸部|お題「金色に」】参加記事

小牧さん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。


金色に輝くイチョウ並木。

聖徳記念絵画館が道の向こうに聳える明治神宮外苑のそれは良く知られ、黄葉の季節になると多くの人手で賑わう。

かさこそと落ち葉を踏みしめながら、秋の香りに包まれるイチョウ並木を歩いていると、懐かしい思い出が蘇ってくる。


「相変わらずのサボり魔か。ここは避難場所じゃないんだぞ?」

その人は、苦笑いしながら部屋の真ん中にしつらえられたストーブの上で、熱に弾ける実をつついていた。

高校時代、私はカリキュラムに押し込められた世界に馴染めず、時々そこから逃げ出していた。行く宛のない足は、いつしか美術準備室に向かい、そこにいる美術講師としばし無駄話をしたことがある。

「ギンナンは嫌いか?食べられるなら食べていけ。焼きギンナンは結構旨いんだ」

ストーブの上で殻が弾け、中からオリーブグリーンの実が顔を覗かせている。私は薦められるままに、二三粒を拾い上げて口に入れた。

「ギンナンって茶碗蒸しに入っていたり、中華の餡かけに乗ってるのしか食べたことがないけど……これ、美味しい」

「そうだろう?一杯やるのもオツだが、流石に学校ではな。そこに急須があるから、お茶煎れてくれないか」

俺は臨時講師だからな。何も聞かないし、余計なことは言わないさ。

週三回、私の通う高校で授業を受け持っていた彼の講師が本当は何を考え、言わんとしていたのか確かめたことはない。今も記憶に新しいのは、あの焼きギンナンの香ばしい香りと味だ。

講師とのやりとりは、私の卒業をもって終わり、あの人の去就がどうなったのか知る手立てはない。

    ※  ※  ※  ※  ※


「これはフィクション?それともノンフィクションなのかしら」

雅也が勤務先から持ち帰った小冊子、一冊の文集を読んで、私はそう問いかけた。

「事実を元にした創作だろうな。これ読んでいたら、焼きギンナンが食べたくなって、殻付きギンナンを買ってきたよ」

読書の秋ならぬ食欲の秋だ。
雅也がそう言って笑うから、私は彼からギンナンの袋を受け取り、台所で熱したフライパンの上にそれを乗せて炒り始めた。


拙稿題名:焼きギンナンの思い出
総字数:852字

よろしくお願い申し上げます。


備忘録的に焼きギンナンのレシピを貼っておきます。


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