初の共同作業【お題「お返し断捨離」【毎週ショートショートnote】参加記事
以下、#毎週ショートショートnote お題:お返し断捨離 参ります。
3月14日。この日をもって、我が家では「 #お返し断捨離 」を決行します。以後、お返しは厳禁。決してしてはいけない開かずのゴミ箱に封印します。
何とも仰々しい宣言と共に、妻がドヤ顔で俺を見つめてくる。お返し禁止令か。むしろ有り難いだけだが、俺にとっては。
「ということで、今日はクッキーを焼きます。準備はいいかしら?」
と宣う妻。気付かぬ内に、我が家の台所は「お菓子教室」と化していたようだ。思いついたら吉日、即行動に移すのが彼女。予測できぬ行動は恋人時代からずっと変わらない。
バターを室温に戻し、クリーム状に練り上げる。白くもったりとした状態に変わると、バターの入ったボウルからバターの優しい香りが立ち上がる。少しずつグラニュー糖を摺り混ぜ、バターと混ぜる。溶いた全卵も少しずつ投入、分離せぬように混ぜていく。
「力仕事だから、あなたが手伝ってくれると助かるわ。……そうそう、切るように混ぜるの。練ると生地が重くなってサックリした食感にならないから。うん、上手じゃない」
褒め上手の妻に乗せられるがままクッキーを成形し、オーブンに投入。15分後に香ばしい香りがして、夫婦合作のクッキーが焼き上がる。
「どう?お返しを買ってくるより大変だけど、美味しいし悪くない時間でしょ?」
少し悔しいが、確かにそうだった。これから毎年、二月にはブラウニーを、三月にはクッキーを2人で焼くことになるのだろう。そこに俺たちの子供が加わる日を夢想しつつ、結婚1年目の春が過ぎていった。
断捨離ではなくて、分かち合うための「関わりの見直し」をしながら。
拙稿題名:初の共同作業
総字数:664字(原稿用紙一枚半)
初めて410字以上で書いてみました。よろしくお願い申し上げます。
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拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。