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檸檬という灯火【シロクマ文芸部|お題『レモンから』】参加記事

小牧さん、いつもお題をありがとうございます😊貼付記事以下、参ります。



レモンから、檸檬から始まる有名な短編がある。

私はフレッシュレモンが好きだ。丸善のような落ち着いた雰囲気の文房具店・書店で時間を過ごすのも嫌いではない。けれど、希代の作家、その作品世界に触れてからは、檸檬と丸善の組み合わせを連想すると、続いて思い浮かぶのはレモンイエローで彩られた紡錘形の爆発物だ。


「弾け飛ぶのは心なのかしら……。なら、弾けたあとはどうなるのかなぁ。軽くなるのか、それとも……」

呟いた自分の声が、部屋の空気に混じって霧散していった。それに続いて、カタンと小さな物音が響く。

「俺たちじゃ、ニヒリズムやダダイスムの色は出せそうもないな。平和でいいと思うけど、俺は」

取りあえず、これ飲もうぜ。直美が冷やしてくれたのが、ちょうど飲み頃になってたから持ってきた。

そう言って、グラスの肌に少し水滴を宿した金色のグラスを二つ、ローテーブルの上に置いた。ありがとう、とお礼を告げてグラスを持ち上げる。

「うん、やっぱりこのレモネードシロップ、美味しい」
「甘くなくて、俺でも飲みやすいな」


半分はボトル目当てで購入したのが本音。それでもおいしいものは美味しい。国産レモンの優しい酸味が、体の中に残る夏の熱を優しく冷ましてくれる。

そうだ。
レモネードを飲みながら、私は子供じみたことを思いついた。そのまま、雑誌のストッカーへと足を運ぶ。

「ん?何をはじめるつもりだ?」
「ふふ。ちょっとしたお遊び」


部屋に戻った私の両手に抱えられたもの。それは各種料理ブック。それをローテーブルの上に積み上げ、その上にレモネードシロップの瓶を置く。

紡錘形ではない、縦長の白陶。それが部屋に灯したキャンドルのようにも見える。バラバラな向きで積まれた本たちは、私たちの日々、それをそのまま映しているようにも見える。


『檸檬』の世界。
作者の梶井基次郎が独りではなく、隣りに歩く人がいたなら。あの物語は生まれなかったかもしれないけれど、丸善でのひとときもまた違ったものになったのかもしれない。私は文豪に対して、無礼だけれど切ない思いを抱き、それを心の中でそっと吹き消した。


拙稿題名:檸檬という灯火
総字数:864字

よろしくお願い申し上げます。


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