音を紡ぐ人がいた【シロクマ文芸部:お題「雨を聴く」】参加記事
雨を聴く。それを文字通りそのまま実行したひとりの男がいた。
『坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK: async』に、その行いが刻まれている。命の刻限を切られた坂本は、メロディでもコード進行でも、シンセサイザー音でもなく、自然そのものに回帰したのだ。インタビュー記事内で坂本が語る頂きとは、いわば理想郷であったのだろうか。
「理想かぁ……理想って何なのだろう」
アルバムを聴きながら、意図せず言葉が零れ落ちた。自分の唇が紡いだ「音」に、自分で驚く。窓の外