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活字の断食

(2日前の「ワークショップのイメージ」からのつづき)

昨年(2018年)は、だいたい毎週、「オトナのための文章教室」をひらいたが、1週間というのはあっという間で、はい次、はい次、とやっているうちにもう1年過ぎたという印象。そこで(前回書いた通り)参加する人たちに対して「推奨」していたようにぼく自身も「ことばにならない違和感」を抱えたまま、いろんなことを(書きながら)感じて、考えることになった。

じつは昨年は、その週1のワークショップをベースにしつつ、もっと「モノをつくる」をやる計画だった。すでにあるものを「かたちにする」と言ってもいい。しかし、春が過ぎ、夏になった頃くらいに、その構想は(ぼくの中で)霧散霧消してしまった。その後、ますます「感じて、考える」が中心の生活になった。冬眠しているような気分だった。

そんな2018年の出来事で、最も心に残ったのは、ほんとうのほんとうに個人的なことで、「活字の断食」を久しぶりにやったこと。

久しぶりというのは、2011年の3月の何日かにはじめて、数日後の3月11日のあの地震で途切れて以来のことだった。

「活字の断食」は、ある一定の期間、ぼくの場合は1週間ほど、「読む」を絶つ、ということをやる。

自分にとって、本を読んではいけないという状況は、怖い。常に読んでいる本があるし、本を持ち歩いているから。

パソコンやスマホを使って、ウェブの記事やら何やらを読むのも生活習慣になっている。気づいたらSNSをチェックしているということも、ないとは言えない(あるわけだ)。

そういえば… 最近は、何かを考えようとした時、すぐに「参考文献」が思い出されて、その本を探してくるという癖がついていた! という気づきもあった。

考えたいのか、読みたいのか、わからない。考えることと読むことは、同じことではないだろう。本というのは便利なもので、自分の頭で考えなくても、本が考えてくれるというところがあるなぁと思った。

「本なんか普段から読んでない」という人がこの「活字の断食」をやっても意味がないだろう。ぼくのような人がやるから、効果がある。

どんな効果? まぁやってみよう。でも今週は無理だな、と思った。

仕事で読まなければいけないものがある、と。すぐに出来ない理由を考える。でも本当にそれを読まないとその仕事ができないか…? とかいろいろと葛藤があり、その仕事の〆切の前日には「読む」を少しだけやってよいことにして、とりあえず始めた。

「読む」をしない。そのかわり、「読む」以外のことは、どんどんやっていい。「書く」はいいわけだ。「聴く」もよし。「触れる」のも「味わう」のも好きなだけやればいい。

もちろん「読む」以外の仕事はどんどんやる。仕事をしながらできる「断食」です。

(「読む」が仕事で仕事を休めない! という人には、ぼく以上に素晴らしい効果がありそうですが、それだけ困難でも大きいでしょう。どうすれば「読まずに読む」ができるか考えないといけなかったりして?)

移動中の電車やバスの中では、スマホを見たり本を読んだりするのが当たり前になっていた。それを止めてみる。

じゃあ、その時間に、何をする?

そんな忙しく何かしようとしないで、ちょっとは、ぼーっとしていれば、いいんじゃない?

それだけで、何だか、急に世界(?)が静かになったような気がする。

そういえば、ぼくはラジオを聴くのが好きだが、最近は、じっくりとラジオに耳を傾けるということもなかったのではないか。

というのも、聴きながら何か別のことをしている、ということが常だからだ。好きな音楽だって同じこと。

それで、部屋にいるときには、好きなラジオを流して、ゆっくり「耳を傾ける」を、心がけてみる。

そんな心境になって、自室(自宅で仕事をする部屋でもある)を眺めてみると、ほんとうに散らかっている。

ただ片づけられてないだけではない。もう数年、「動いて」いない。

仕事に使った資料(まー、いわば紙ゴミだ)は段ボールに詰めて、次から次へと「保留」の名のもと積み重ねてある。

これは「片づける」とか「掃除をする」というレベルのことで何とかなるものではない。

よし! 思い切った模様替えをしよう! と考えて、すぐ実行に移した。

棚から物を出し、動かして、拭き掃除をしたり、部屋の壁にベタベタ貼ってあったものを、全部剥がして、また拭いたり、どんどんやる。

部屋の中が動くと、部屋の眺めが変わり、部屋の中にいる自分の視野も変化する。

疲れると、ラジオを聴きながら、窓から屋根に出て、座って空を眺めた。空を眺めるのは、4歳の息子も付き合ってくれた。

「活字の断食」の週を無事に(?)過ごした後、何というか、とってもスッキリした。

それから、その体験を語ることばを探って、書き始めた。

いろんなことが自分の中で飽和状態になり、もがいていたのかもしれないな、と思った。

今日ここで書いたことは、その原稿に書いていることの一部を、ダイジェストのようにしたものです。

(つづく)

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