体温ハラスメント

そんなものはない。今のところは。しかし将来はどうだろう。高校生の時に100キロを超える巨漢が部活の後輩にいた。「冬は近くに寄って良い。暖かいから。夏は少し離れてくれ。」と言うのが後輩が気に入ってくれた冗談の一つにあった。十分にいじめ発言として成立する言葉だが、これくらいの毒舌は問題にしない寛容な後輩なので助かったものだ。このやりとりでハラスメント要素を取り上げるならそれは僕の言動にある。後輩は何もしていないのだから。しかし、スメルハラスメントを例にすると、臭いをさせているだけでハラスメントになる。過剰な香水の芳香とか最初は道具の扱いに関する注意だったはずが、体臭が問題視されるまでになっている。清潔さを感じる見た目をしていれば相手も指摘することを自重するが、そうでなければ、正当性のある批判として体臭を指摘される。そうなるとどうだろう、猛暑の日に僕の後輩のような巨漢の人に暑さを感じさせるということでハラスメントになったりするだろうか。彼は体重という自分でコントロール出来ることに対して管理を怠り、それが一因して周りに暑苦しさを感じさせているからハラスメントに当たるという論拠が成立してしまうのだろうか。僕たちは子供の時に人の役にたつ人間になることを大人に望まれ、それと同等以上に人に迷惑をかけない人間になるように言い聞かせられた。そこから考えると、ハラスメントを受け入れる下地は僕たちの国はどこの国よりも整っているのかもしれない。それに日本は国際的に見れば豊かで安全な国だ。満たされている分だけ、満たされない部分に不満を抱きやすい。だからこそ僕が何気なく表題に書いた体温ハラスメントなんて考えさえ、もしかしたらと思わせてしまう、心許なさが拭えないのだ。

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