【SS】ヒヤっとしてキーンとするやつ

「あづ~い…」
「あついね~…」

普段は木陰が多く涼しい魔女の森も、今日は暑い日だった。
リュミエルとエクリエルは居間のテーブルに二人仲良く
突っ伏していた。
普段グータラしてる暇はない彼らも今日ばかりは暑さにやられ、
何をする気も起きなかった。

「エクリエル~…冷気出して~」
「良いよ~…」

エクリエルが手を上にかざすと、
上からひんやりとした空気が流れてきた。

「「あ~涼しい~…」」

二人は声揃えて、ひんやりした空気に癒やされた。
しかし、それはすぐに暑い空気に上書きされる。

「え~…もう終わり~?」
「さすがにずっとは難しいよ~…」

エクリエルのその答えにがっかりしたリュミエルは
再びテーブルに突っ伏した。
その時、彼らの持ってるリンクシェルが音を鳴らす。
リュオンからの通信だ。

「もっしもーし!二人とも元気?」

通信の中のリュオンは元気そうな声だったが、
対する二人の声は弱々しかった。

「暑さで元気じゃない…」
「同じく…」
「ありゃりゃ、そっちは暑いんだ。」

う~ん、とリュオンは考えると、
なにかひらめいたかのように「あっ」と声を出した

「これから良いもの持って、そっち向かうヨ」
「「良いもの?」」
「ふふふ、楽しみしててネ!」

そう言うと、リュオンは通信は切った。

それから10分後、家にリュオンがやってきた。

「やあ、二人とも!確かに暑いネ…」

双子はリュオンが手に持ってる何かの道具に注目した。
上に手で回すハンドルがついている。

「それ何?」
「もしかして、それが良いもの?」
「そうだヨ!これは氷を削る道具なんだ」

リュオンが説明するには、ハンドルは装置の回転する刃と連動しており、
その刃で氷を削るという。
そして削られた氷が装置の下から出てくるという仕組みだ。

「これでかき氷作って食べようヨ!
 ヒヤっとして美味しいヨ!」

かき氷という聞き慣れないものに最初、双子はキョトン顔だったが、
削った氷を器に溜めて、シロップなどをかけて食べるという説明を聞き、
興味を示した。

「面白そうだな、やってみようよ!」
「じゃあ私が氷を用意してあげるね!」

先程までグータラさはどこへやら、双子達は未知のことを前に
目を輝かせていた。
早速エクリエルが氷を作る。
普段から氷の槍を放ってる彼女にとって、小さな氷をたくさん出すことは
造作もなかった。

次にハンドルを回して、氷を削っていく。
ハンドルを回すのはリュミエルだ。
少々力のいる作業だが、氷が削れていき下の器に溜まっていった。
やがてこんもりとした氷の山ができた。

三人分の氷の山ができた時、リュミエルが気がついた。

「あ、でも家にシロップがないじゃん。
 どうするのエクリエル?」
「ハチミツとかでも良いかな?」

そう言うと、エクリエルはキッチンからハチミツを持ってきた。

「お、良いかもネ~
 んじゃ、それを氷の上にかけてみて」

エクリエルがハチミツをかけ、かき氷が完成した。

「それじゃ、早速食べてみよっか!」
「「「いっただっきまーす!」」」

三人揃って、口の中にかき氷を運ぶ。

「おいし~い!
 ヒヤっとして美味しいよリュオン君!」

エクリエルが嬉しそうに言う。

「ホントだ!
 今日みたいな日なら、いくらでも食べれ…」

その時、リュミエルが顔をしかめる。
その様子に心配そうなエクリエルだったが、
リュオンは笑っていた。

「今、頭がキーン!ってしたでしょ?
 これもかき氷も醍醐味なんだよネ~」

少しムッとしたリュミエルだったが、
今度はリュオンがそうなったようで、思わず笑ってしまった。

「なんだよ、お前もなってるじゃん」
「アハハ~!でも、悪いものじゃないでしょ?」

かき氷を食べ終わった双子はとても満足していた。
そして、リュオンに感謝した。

「ありがとう、リュオン。良いものは持ってきてくれて」
「すっごく楽しくて、すっごく美味しかったよ!」
「えへへ~、どういたしまして~」

その時、奥の部屋のドアが開いて、
師匠のイザベルが出てきた。

「あら~、なんか良いもの作って楽しそうね~
 アタシにも食べさせてよー」

彼女はテーブルの上に置かれた氷削り機を見て、
何をやっていたのか察したらしく、三人にせがんだ。

「まったく、しょうがない師匠だな」
「今用意してあげますね」

うだるような暑さの魔女の森。
しかしかき氷を作って食べた彼らは、
そんな暑さのことなど、すっかり忘れていた。


はい、ということでうだるような暑さだったんで、
書いたSSでした。

かき氷という食べ物に双子は馴染みがなさそうだなと思いました。
でも、そのうちエクリエルがこれヒントにシロップだけじゃなく、
フルーツとかも乗せた今風のかき氷とか思いつきそうな気がしてきました。

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