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大人も子供もミュージカルオタクも初心者もみんなみんな楽しい 『メリー・ポピンズ』

「最近ミュージカルを観るのにハマってて」と言うと、「そうなんだ。何かおススメとかある?」と訊かれることがある。しかも、結構高い確率で。

ミュージカルを観始めてそこまで日が経っていない私に、親しい友人がそう訊ねる理由は明白だ。こう考えているのだろう。

「あいつが ”何かにハマった" 」というからには、そりゃもう短期間であれもこれも・・・ものすごい密度でいろんなことを吸収してるに違いない

実際何かにハマると他の大事なことをすっかり忘れる傾向にある。今はいろんな事情でそうそう忘れたりはしないけれど、夢中になると集中し過ぎてしまうのは、昔からだ。

今まで「おススメミュージカル」を訊かれたときは、『ライオンキング』と答えていた。理由は主に3点。

  • チケットが入手しやすい

  • 作品中で使われる曲に知ってるものが多い

  • 歌と芝居のクオリティが高い

物語の背景に説明が必要なヨーロッパの歴史ものよりも、ディズニーアニメにもなっている『ライオンキング』のほうがとっつきやすいだろうし、なにより「行こうかな」と思った時に、チケットを買ってすぐに観に行ける。

実は、人気のミュージカル演目は、かなり事前に予定を立ててチケットを入手しておかないと、観に行けない。例えばこの6月に帝国劇場で上演される『ガイズ&ドールズ』は、おそらく今から行きたいと思ってもチケットの入手は困難だろう。どこかで評判を聞いて、観に来たいと思った時にはすでにチケットが無い、ということがままあるのが、ミュージカルの世界なのだ。

劇団四季でロングランを続けている『ライオンキング』には、そんな心配はない。基本的に行きたいときにチケットは取れるし、テーマも分かりやすい。ダンスのクオリティも歌のクオリティも、全力でおススメできるレベルである。

だがなぜか友人にはまったく刺さらなかったようなのだ。『ライオンキング』が刺さらないとなると・・・と結局『アラジン』やら『アナ雪』やら、劇団四季の作品を勧めてしまっていた。そう。『メリー・ポピンズ』に出会うまでは。

歌ありダンスあり!まさに王道ミュージカル

ミュージカル『メリー・ポピンズ』の元ネタは、パメラ・トラバース原作の児童文学をウォルト・ディズニーが映画化した作品である。ディズニーの『メリー・ポピンズ』はあまりに有名なので、作品中で使われる曲はミュージカルに馴染みがなくとも、誰もが「聞いたことある!」と思わず言ってしまうものばかりだ。

ミュージカルをあまり観ない方にもお馴染みの曲たちだけではなく、大勢での迫力あるダンスシーンも、本作品の魅力となっている。

日本では2018年に初演がかかり、2022年の今回は再演。
主人公のメリー・ポピンズは今回が初となる笹本玲奈さんと、初演から演じておられる濱田めぐみさんのダブルキャスト。どちらにしても、歌には定評のあるお2人だ。
煙突掃除屋のバートは、これまたダブルキャストで、大貫勇輔さんと小野田龍之介さん。小野田さんはイメージがあまりなかったが、大貫さんは、抜群の身体能力の持ち主である。

ミュージカルは初めてという方にもお馴染みの曲と華やかなダンスを、ミュージカルオタクも納得の歌い手とダンサーで魅せる、王道のミュージカルに仕上がっている。

大人も子供も分かりやすいストーリー

『メリー・ポピンズ』は大人も感動する「家族再生の物語」だ。中心に居るのは、もちろん子守のメリー。

厳しくしつけようとする両親。連れてくる子守に反発する子どもたちに感情移入する年齢の子たちは、ある日突然やってきたメリーの見せる魔法と相棒のバートが見せてくれる、ワクワクするような世界にこころが踊るだろう。

一方、子どものしつけに手を焼く年齢の大人たちは、終盤でメリーが教えてくれる「大切なもの」に気づかされる。家族の絆を再生したメリーが、お別れの時に空を飛ぶ姿に、思わず「ありがとう、メリー」と言いたくなる。

大人も子どもも元気づけてくれる、スペシャルな物語である。

ミュージカル界指折りの歌姫とダンサーの共演

日本のミュージカルファンで、濱田めぐみさんの名前を知らない人はいないだろう。土居裕子さんに憧れて音楽座に入団し、退団後は劇団四季で四季を代表する女優として活躍、退団後も数々のミュージカルに出演している歌姫である。

正直、濱田めぐみさんの歌と芝居で心が動かないのなら、私とは「こころのツボ」が違うと思う。もしどこかで濱田めぐみさんの出演するミュージカルをご覧になって、彼女の歌と芝居に感ずるところが何もなかったとしたら、「ごめんなさい」と言うしかない。そういうレベルの女優さんである。

彼女がメリーを演じるというだけでも観る価値はあると断言できるが、ミュージカル『メリー・ポピンズ』はダンスも素晴らしい。大勢のダンサーが揃って踊る姿は圧巻だし、大貫勇輔さん演じるバートの身体能力の凄さは、度肝を抜かれるほどだ。

『メリー・ポピンズ』は耳も目も幸せにしてくれる、ハッピーなミュージカルなのである。

代表曲の紹介

「チム・チム・チェリー」

バートのテーマソングともいえる「チム・チム・チェリー」は、幾度となく作品中で歌われる。耳に残る印象的なメロディーは、つい口ずさみたくなってしまう。NHK『みんなのうた』に登場したこともある曲なので、聴けば「なんだか聞いたことがあるような気がするな?」と思うに違いない。

「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」

舌を噛みそうなタイトルだが、圧巻のダンスシーンとともに歌われるこの曲は、作品中で最も盛り上がるところで使われる曲だ。
東京ディズニーランドでお昼のパレードをご覧になったことがある方なら、聴いたことがあるだろう。映画『メリー・ポピンズ』の中でも使われており、作品を代表する曲と言って良い。

言葉に特別な意味はなく、よくある「デタラメな言葉」であるが、作品中では人生をポジティブに過ごすための魔法の言葉、として使われている。

終わりに 老若男女に全力でおススメできる作品

大人も子どもも、男性も女性も、ミュージカルオタクも、ミュージカル初心者も全員が楽しめる作品は、実はそんなにない。

有名な『レ・ミゼラブル』は子どもが楽しめる作品とは言い難いし、男性に宝塚作品を勧めてもハマる人は少数派だろう。それなりの頻度で上演されていて、なおかつ誰が観ても楽しめ、チケットが比較的入手しやすい稀有な作品に出会えて、幸せだ。

なお、私がわざとステージの遠い3階席を取って観に行ったのには理由がある。
メリー、最後に空を飛ぶのである。

2階または3階席を取っておくと、空を飛んでそばを通過していってくれるメリーが観られる貴重な機会を得られるのだ。

手が届きそうなところを、濱田めぐみさん演じるメリーが通りすぎていった。

出来ればもう一度観たかったが、6月・7月の『ガイズ&ドールズ』との予算の兼ね合いがあるから、仕方ない。

ぜひまた、濱田めぐみさんのメリーを観たいものである。


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