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ディズニーアニメと人形浄瑠璃の素敵なマリアージュ 劇団四季『ライオンキング』

観たと思っていたけど、絶対に観ていない。確信した。
この作品をもしすでに観ていたら、私は興奮してあちこちで「絶対観たほうがいい」と言いまくっているはずだからだ。

そのぐらい素晴らしかった。劇団四季『ライオンキング』。
いやはや、劇団四季、おそるべし。浅利慶太はやっぱりすごい人だった。

事の起こりは思いつき

以下の記事で書いた、「初心者おススメミュージカル」として挙げたものは、自分でも観ておかねばなるまい、と思いたった。

『ウエスト・サイド・ストーリー』は昨年TBS主催で上演して途中コロナで中止になったとのこと。しばらくは公演がなさそうだ。となると、残りは・・・ということで、『ライオンキング』と『オペラ座の怪人』の上演スケジュールを劇団四季のHPで確認した。

そうしたら、『ライオンキング』は6月でいったん終わってしまうではないか。一方『オペラ座の怪人』は来年1月までやっているという。では8月あたりに一度行こう。ということで何となくスケジュールを勝手に決めて、4月の観劇予定が1つしかなかったのをいいことに、その週末に『ライオンキング』のチケットを取った。正確には、この後坂元裕二朗読劇が当たって、4月の観劇予定は2つになるのだけど。

いつも、劇場に行くときは一人だ。だから、今回も一人である。

子どもたちの予定もあり、昼公演を観て自宅にとんぼ返りする予定で、大井町に向かう。四季劇場 [夏]に行くのは初めてだ。駅を降りてどこで昼食を取ろうか迷い、結局駅前のイトーヨーカドー1Fのフードコートでパンとコーヒーの昼食をさくっと済ませて、劇場に向かった。

東急大井町線の線路をくぐり、正面にキャッツシアターが。キャッツシアターの外には人が並んでいた。今日はそっちじゃないと思いながら、向かって右にある四季劇場 [夏]に向かう。

外観はこんな感じだ。

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QRコードをかざして、手を消毒して中に入り、検温する。
すると中には、本日のキャスト表が。

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キャスト表の写真をとりあえずスマホで撮って、売店でパンフレットを買って席に向かった。

予想はしていたが、子ども率が結構高い。コロナの状況下にも関わらず、割とたくさん人が入っていた。さすが、『ライオンキング』。

おとなしく、おとなしくマスクをしてじっと開演を待った。

なお、『ライオンキング』はディズニーアニメとしても有名なので、ストーリーをご存じない方はあまりいないと思うが、念のため劇団四季のページにあったあらすじへのリンクを貼っておく。

オープニングで度肝を抜かれる

オープニング。「CIRCLE OF LIFE」が流れてくる。もうこの時点で度肝を抜かれて、感動で泣きそうになった。

サバンナの動物たちが、ステージに次々と集まってくる。もう、その動物たちのすべてが、想像をはるかに超えるものだった。キリンはめちゃくちゃ首も足も長いし、ゾウは信じられないくらいデッカいし・・・

そして、ラフィキの歌である。そう、「ラフィキ」。

『ライオンキング』のラフィキは、別にメインキャラクターでも何でもない、ヒヒの呪術師(下の画像でシンバを掲げているのがラフィキ)だ。にも関わらず、のっけから度肝を抜くような歌を披露してくれるのである。

劇団四季所属の劇団員の、層の厚さを思い知る。『ライオンキング』のメインキャラクターと言えば、王ムファサ、ムファサの弟スカー、シンバ、ナラぐらいまで。ラフィキ、ザズー、ティモン&プンヴァ、ハイエナたちあたりは脇役だろう。

なのに、何なのだこの、役者さんの歌のクオリティは。のっけから泣きそうですけど、私。

「CIRCLE OF LIFE」自体が、この『ライオンキング』という物語自体を象徴するような曲である。最後にもう一度流れる曲だとも知っている。だからもうこの時点で、十分すぎるほど感動してしまうのである。

歌の上手さでいえば、ハイエナたちにも驚かされる。敵役のスカーに劣らず、3頭とも素晴らしかった。

ヤングシンバ・ヤングナラの躍動

劇団四季はどうやって子役を集めるのだろうか。やはりオーディションなのか。ヤングシンバもヤングナラも、あの年で(小学生だと思われる)芸達者である。どんなトレーニングをしたら、あそこまで歌も踊りも出来るようになるのか分からないけれど、きっとオーディションを受ける時点でどこかできちんとレッスンしているのだろう。

子どもの時から劇団四季に所属していたら、あの海宝直人さんみたいなのが出来上がるのだろうか、とふと思ってしまった。

あれだけのスキルがあっても、将来ずっとミュージカルの世界で活躍できるわけではない。厳しい世界なのだなとぼんやり思う。

パペットの多用に人形浄瑠璃を連想する

ザズーの登場シーンでは人の方に注目してしまったのだが、そのうち目が慣れてザズー(鳥)本体の方しか目に入らなくなった。

ティモン&プンヴァのティモンに至っては、最初から本体しか目に入らなかった。

しかし、ザズーもティモンも既視感がぬぐえない。いや、キャラクターとしてこの形で観るのは初めてだ。どこで観た・・・

はっと思い当たった。高校時代の文化的行事とかいうやつで観た、人形浄瑠璃である。

黒子が動かしている、その人形の動きが本当にリアルでビックリした覚えがある。同様の驚きが、ザズーとティモンにもあった。まるでアニメを観ているような滑らかな動きに、ただただ、驚嘆した。

もし、パペットの多用が人形浄瑠璃にヒントを得たものだとすれば、日本キャストとブロードウェイキャストで、パペットで演じられているキャラクターの完成度は、かなり違うのではないだろうか。

だって日本は、そもそも人形浄瑠璃の文化を持つ国。パペットをリアルに操作して観客に見せるという状況を考えた時、おそらく日本の観客は、精度を上げなければ納得しないと思うのだ。

もっとも、日本での『ライオンキング』初演は1998年だから、もう20年以上前だ。その頃から徐々に、パペットを多用する現在のスタイルになっていったのかもしれないとも思う。

そんな風に考えて、帰ってからパンフレットを見たら、やはり人形浄瑠璃に着想を得ていたようだ。私の頭脳もまだ、まんざら捨てたものでもない。

全員のミュージカル俳優偏差値が高い劇団四季

主要キャストの皆さんの様々なスキルが高いことは、言うまでもないのだが、主要キャストではない役者さんも歌や踊りのスキルが高かった。ハゲタカを空に舞わせる役の人は、ゆったりした動きを何度も繰り返し、役者としての身体能力の高さを示してくれた。王ムファサの動きの大きさとスピード感覚に、王の威厳を感じた。

アンサンブルさんたちのミュージカル俳優偏差値(勝手に作った造語)が、総じて非常に高くて、観ていてとても心地よかった。

終わりに

ミュージカルのレビューなのに、ほとんど曲のことを書いていないのは、『ライオンキング』の曲は皆さんご存知で、詳しく説明する必要がないと思うからだ。有名な「CAN YOU FEEL THE LOVE TONIGHT」とか「ハクナマタタ」は多くの方がご存知だろうし、オープニングでもエンディングでも使われる「CIRCLE OF LIFE」はこの演目のテーマを端的に表す曲でもある。

ストーリー自体は、父と子の愛だったり、ハムレット的に王の弟が国を乗っ取ろうとしたり、いろいろ起こるものの最後はハッピーエンドとなる。

舞台美術の素晴らしさにも、目を奪われる瞬間がたくさんあった。パンフレットにはいろいろ書いてあるのだが、パンフレットの写真をここに載せるのはよくないので、避ける。

とにかく、役者さんの基本的なスキルがとても高く、舞台美術や魅せる術も考え抜かれていた。間違いなく、『ライオンキング』は名作だと思う。

今後も、年に1回ぐらいは観に行くように、予定を調整するようにしたい。

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