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ただただ、すごい

土曜日。娘と池袋の東京芸術劇場にいた。
二度目の『兎、波を走る』を観るためだ。

いつも豪華な俳優さんたちの競演となるけれども、今年のNODA・MAP公演は何と高橋一生さん、松たか子さんに加え多部未華子さんまで出演するという。不安はチケットが取れるかどうかだけ。娘に俳優陣を見せたら是非行きたいと言うので、運良く取れたチケットを手に行ってきたのだ。

前回より少し後方の良席からは、オペラグラス無しでも俳優さんたちの細かな表現がよく見えそうだ。娘には分からない部分もたくさんあるだろうけど、まあ良いかと思いつつ着席し、幕が上がるのを待った。

終演後、娘は呆けていた。
すごいものを観たという衝撃が身体を駆け巡っているであろうことは明らかだった。ただ一言、「すごかった」。何を聞いてもそう繰り返す。オウムのように。

なんだかわからないけど、すごかった。
とにかく、すごかった。
全身がそう言っている。

『カルテット』の家森さんと巻さんだ!と喜ぶ娘の写真を、劇場の入口で撮った。軽く「俳優さんを間近に見られる!楽しみ!」と考えていた彼女にとって、NODA・MAPの第26回公演は少しばかり強烈すぎたかもしれない。脚本家・演出家野田秀樹は「言いたいことがたくさんある」人で、言葉遊びの応酬からどうしようもない不条理を、わたしたちに突き付けてきた。

極めて正しい演劇の楽しみ方を娘に教えてくれた野田秀樹さん、高橋一生さん、松たか子さん、多部未華子さん、秋山菜津子さん、大倉孝二さん、大鶴佐助さん、山崎一さん、アンサンブルの皆様、本当にありがとうございました。

また来年、NODA・MAP公演に誘ってみよう。
いや、娘がついてこなくても行くのだけれど。


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