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幻冬舎新書『映画女優(ヒロイン)のつくり方』刊行記念イベント 行定勲&相田冬二『映画女優のつくり方』参戦記

行定勲監督は、とても正直な人だった。

8月6日、かつて広島に原爆が落とされた日に北参道の幻冬舎で行われた、幻冬舎新書『映画女優(ヒロイン)のつくり方』刊行記念イベント。時期的に8月11日公開の行定勲監督作品・『リボルバー・リリー』に関する話が中心になるだろうと予想しつつ、そういえば『リボルバー・リリー』主演の綾瀬はるかさんは広島の出身だったなと、ぼんやり考えた。

そんなアレコレを脳内でこねくり回しながら、代々木駅からてくてく歩いていたら10分ほどで幻冬舎に到着した。並んでいる何人かの後ろにつく。受付で名乗ると、『映画女優のつくり方』を1冊と番号の書いた紙を渡された。なにやら抽選会があるらしい。「ヒキが弱いんだよなこういうの」と思いながら地下の会場へと向かう。

イベントが始まる前に改めて本を読み直しながら、自分が以前書いた感想も読み直す。

行定勲監督のお話を聴く中で感じたのは、「嘘のないひと」だということだ。

カメラのレンズを通した綾瀬はるかさんの美しさを語る時、トレイシー・ハイドやソフィー・マルソーは好きだが出演している映画は好きでないと語る時、ラブシーンで女優を撮る緊張感を語る時。「女性」への畏怖か敬意か、謎か。はたまたそれらが混然一体となった何かか。とにかく一言では言い表せなさそうなその「何か」を、楽しそうにさらけ出す。

いや、女性に対して抱く「何か」に正直なだけではない。『映画女優(ヒロイン)のつくり方』が浮き彫りにする映画監督・行定勲以上に、行定勲は真っ直ぐだった。映画を通じて自身が描きたい「にんげんというもの」に対して、真っ直ぐで、嘘が無いひとだと分かった。

行定勲監督が考える「にんげん」を、監督が考える純度でカメラの前に提示する女優たち。本書で触れられているひとりひとりがどれだけ素晴らしいのかを、観客として自分はきちんと受け取れていただろうか。お話を聴きながら改めて、観客として真っ直ぐでありたいという思いを強くした。

8月11日公開の『リボルバー・リリー』には、どんな「にんげんたち」が描かれているのだろう。舞台は1924年だという。男たちが躍起になって「強い日本」を世界に示すのだと突き進みつつある当時の日本で、女性である小曾根百合は、どんなふうに生きたのだろうか。ウクライナでいまを生きる女性たちが、頭の中でリンクする。

本作が終戦記念日に最も近い金曜日に公開されること、広島出身の綾瀬はるかさんが主演を務めること。なんの意図がそこにあるのか。いや、考え過ぎか。憶測で観賞眼を曇らせてはいけない。

公開当日、たまたま仕事が休みという幸運。映画館でじっくり『リボルバー・リリー』の中で生きるにんげんたちを、見つめてこよう。

ちなみに抽選会は、やはりハズレ。割とたくさん当選の品自体はあったのだけど。やはりヒキが弱い。


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