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日本版『キンキーブーツ』再演のニュースに思う

10月31日の千秋楽から、『マドモアゼル・モーツァルト』の主人公のことを、ずっと考えていた。新たな終わりのない旅の途中のモーツァルトは、今も楽しそうに、笑顔のままに、頭に浮かんだメロディを五線紙に書き写していることだろう。傍らでは、きっとコンスタンツェが半ば呆れながらも笑顔で、脱ぎ散らかした服を片付けているに違いない。

そんな呑気な空想は、11月4日の夕方飛び込んできたニュースで一気に霧散した。

2022年秋に、日本版『キンキーブーツ』を再演するとのニュースが飛び込んできたのだ。ローラ役は、城田優さん。東宝版『エリザベート』のトート役も記憶に新しい、実力派だ。おそらく、魅力的なローラになるに違いない。

気になってはいたのだ。『キンキーブーツ』は素晴らしい作品で、世界中で上演されている。日本だけではなくて、色々な国と地域で愛され続けている名作だ。あれほど、観客と演者の皆さんがまるでライブのような一体感を得られるミュージカル作品は、他にない。日本版『キンキーブーツ』の灯を消さないで欲しいと、心の底で静かに願っていた。

私の『キンキーブーツ』への思いは、何度かnoteに綴っている。ここにもう一度記しておく。

noteで交流のあった皆さんの、『キンキーブーツ』に関する記事をまとめたマガジンもあった。

『キンキーブーツ』が三浦春馬さんの代表作であることは、疑いの余地がない。ローラ役を勝ち取り、さまざまな困難を乗り越えて板の上に立った彼は、輝いていた。ミュージカル俳優としての三浦春馬に度肝を抜かれた人も、少なくなかっただろう。日本の初代ローラは、素晴らしかった。

今回、2代目ローラを迎えて上演するにあたり、ジャパンカンパニーの皆さんの胸にはさまざまな思いがやってきたに違いない。新ローラの城田優さんだって、色々言われることは百も承知だろう。

それでも、『キンキーブーツ』と言えば、6つのステップ。3つ目の「あるがままの他人を受け入れる」は作品の大きなテーマでもある。春馬ローラ以外を、(今は)受け入れられない春馬さんのファンをも丸ごと受け入れて、前に進む決断をしてくれたキンキーブーツ・ジャパン・カンパニーに、胸が熱くなる。

もう一度、6つのステップをここに置いておこう。

1.Pursue the truth
2.Learn something new
3.Accept yourself and you'll accept others, too
4.Let love shine
5.Let pride be your guide
6.You change the world when you change your mind

春馬さんファン1人1人の胸の中に、それぞれのローラがいる。まだ春馬ローラ以外を受け入れられない人も、たくさんいると思うのだ。だが、ジャパンカンパニーの皆さんは、そんな春馬さんファンごと受け入れて、前に進もうとしている。私の胸を熱くするのは、彼らの心意気なのである。

『キンキーブーツ』という素晴らしい作品が、1人でも多くの人に届くことを願ってやまない。この再再演は、三浦春馬さんの終わらない旅の続きでもあるのだから。

また、嬉々としてメロディを五線紙に綴る、笑顔のモーツァルトが脳裏に蘇る。『マドモアゼル・モーツァルト』の主人公と同じように、三浦春馬さんの終わらない旅は、続いている。どこまでも。

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