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垣間見える「舞台人・明日海りお」を支えた愛情 『Huluオリジナル 明日海りおのアトリエ』

食と結びついている記憶、ってあると思うのだ。

例えば、私の保育園(3歳児クラス)の時の連絡帳に書かれている朝食メニューに、頻繁に出てくるメニューがある。

「じゃがいもとベーコンの炒め物」だ。

特に何の変哲もないおかずで、拍子木切りにしたじゃがいもと薄切りのベーコンを炒めて、醬油で味付けしただけのシンプルなものである。そんなに好きだった記憶はないのだが、母がこれだけ頻繁に書いているなら、たぶん好きだったのだろうなと思う。

そして、不思議なことに私も、時々作っているのだ。なんの変哲もない、じゃがいもとベーコンの炒め物を。
食卓に上る回数が多かったということだけは、うっすらと記憶にある。だから、作り方も特に母に聞かずとも覚えていた。じゃがいもを炒めて、蒸して、ベーコンを入れて、醤油を入れて炒めるだけだ。最近はオイスターソースも追加しているけれど、私が子供の時はきっと醤油のみだったに違いない。

4月末から私が追いかけ始めた、元宝塚歌劇団花組トップスター・明日海りおさん。彼女にも、食と結びついている記憶があるようだった。Huluで配信されている『明日海りおのアトリエ』第8回で、話してくれた。

『明日海りおのアトリエ』についてざっと説明

Huluで明日海さんの冠番組、『明日海りおのアトリエ』が始まったのは、5月末だったか、6月初めだった。Hulu公式から番組の紹介文を抜粋する。

宝塚歌劇団花組トップスター・明日海りおが「美」「癒やし」「食」といったジャンルで様々なことにチャレンジ。ささやかだけど心が豊かになる《日常生活の素敵テクニック》と《オトナ女子の新たな世界》を学びながら、秘密基地である《真っ白いアトリエ》を自分色に染め上げていく。

全8回がHuluで配信されていて、明日海さんの好きなハワイアンテイストの雑貨を購入しに店に出向いたり、土鍋でご飯を炊いてみたり、薬膳にチャレンジしたり、本当に好きでリラックスできることをふんわりとやってみる番組になっている。

第8回のタイトルは、「明日海家の炊き込みご飯を作る」。実際に「明日海家の味」炊き込みご飯を作りながら、思い出を語ってくれている。

宝塚歌劇団トップスターの過酷さを感じる

宝塚歌劇団では、だいたい1日2公演(1公演は芝居とショーの2本立て)を1か月ほどの間、繰り返す。トップスターは出ずっぱりだ。千秋楽までの間、体力的にはかなり消耗するだろう。

明日海さんご本人は、第8回で「千秋楽あたりになると、痩せちゃってるんですよね」と言っておられた。合間に宝塚専門チャンネルの番組収録や雑誌の撮影などもあったのだろうし、花組のトップとして、組子の皆さんへの気配りも欠かせない。

精神的にも肉体的にも、大変なお仕事だなと思わされる。

支えてくれた母の味

千秋楽を終えて、「はあ疲れた~」と帰ってきた時、公演を観に来てくれたご両親がご自宅にいらっしゃって、お母様が手料理を振舞ってくださったと語っていた、明日海さん。

15歳で宝塚音楽学校に入学した明日海さんにとって、子どもの時に食べていた母の味は、千秋楽までのさまざまなプレッシャーをを乗り越えた身体と心に、染み渡ったのではないだろうか。

お母さまの気持ちを想像してみる。娘と夫と3人で囲んでいた食卓から娘がいなくなって、寂しくて、食卓に出すものが適当になっていく。

そんな日々を過ごしている時、未知の世界に飛び込んで頑張って頑張って、輝いている娘の姿を目の当たりにする。きっと、あんなに頑張っていたら、食べるものは適当になっているに違いない。
せめて、千秋楽の日ぐらい、ゆっくり好きなものをお腹いっぱい食べて、ホッとしてもらいたい。

そんな思いではないのかな、と想像した。
きっと、張り切って好物をたくさん作ったのだろう。美味しいと喜ぶ笑顔を想像しながら、自然と笑顔になるお母さまが、目に見えるような気がした。

公開されたレシピで炊き込みご飯を作ってみた

明日海さんがそんなお話をしながら、土鍋で炊いてくれた炊き込みご飯のレシピをもとに、私も自宅で炊き込みご飯を作ってみた。トップ画像はその出来上がりの写真である。

残念ながら、私は土鍋でご飯を炊くほどマメではないので、炊飯器で炊いた。炊飯器が出来上がりを告げたので、ワクワクしながら開けてみた。立ち上るどこか懐かしい香りに、なぜか脳裏に浮かんだのは母の郷里・福島県某所にある母の実家の台所だった。

炊飯器から立ち上る香りの向こうに、明日海さんのお母様が見えたような気がした。第8回の明日海さんのお話と、炊き込みご飯をほおばる表情に、舞台人・明日海りおを支えたものの一つは、お母様の愛情だったと書いてあったように思う。

終わりに

私の炊いた炊き込みご飯は、家族に概ね好評だった。だが、男どもはやっぱり白飯でお肉ガッツリ、みたいな食事がお好みのようで、特にコメントはなかった。ただ一人、娘だけが「美味しい」を連呼しながらたくさん食べていたのが、印象に残っている。

なんとなく、明日海さんのお母様の気持ちが、ほんの少しだけ味わえた気がして、嬉しくなる。

愛をもって、ご両親が明日海さんを育ててくださったことを、十分すぎるほど感じた回だった。明日海さんのご両親に心からお礼を申し上げたい。

明日海さんのご両親へ
舞台人・明日海りおをこの世に生み出してくださり、支えてくださって本当にありがとうございました。おかげさまで、私は生きる勇気をもらっています。大げさではなく、1年ほど前の私は本当にどうしようもないほど毎日悲しくて、リアルに泣いていて、気持ちの落ち着けようが分からなくて、とにかく心が千々に乱れた状態だったのです。

明日海さんが、私に笑顔を戻してくれました。
いくら感謝しても、感謝しきれません。

ありったけのありがとうを、ご両親と明日海さんに込めて、ここに置いておきます。


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