見出し画像

ガジュマル枯らした

去年の春にガジュマルを購入した。ムチムチとした幹、つやつやとした葉っぱ。近所のアーケードの花屋を通り過ぎるたび、一本の小さなガジュマルに目が行った。今日まだあの子がいたら、うちの子にしよう。そう心に決めて、アーケードを歩いたことを覚えている。

沖縄では、ガジュマルは精霊の家とされており、大切にし、彼らとよい関係を築けば、持ち主の人間に幸福をもたらすとされている。ただし、おならやたこが苦手で、彼らが嫌がることをすると、恐ろしい報復があるらしい。

緑の葉っぱで一杯だったガジュマル。夏に長い間帰省することになって、知人に預けたら、葉が沢山落ちて帰ってきた。けど、落ちた場所からまた葉っぱが生えてきて、植物ガジュマルのたくましさに感動した。

冬になり、ガジュマルの葉が急速に枯れ始めた。ちょうど大切な人とお別れしたり、新しくアルバイトを始めた時期で、心に余裕が無くなりだしたときだ。

水やりのタイミングを変えたり、場所を頻繁に変えるようにしても、葉っぱが次々と茶色くなり、落ちていくのを止めることができなかった。

持ち主のネガティブな気を吸って浄化しようとしてくれたのだろうか。葉が全部落ちたときは、唖然とした。あんなに元気だったのに、枯らしてしまってごめんね、と見る度に切なく、申し訳ない気持ちになった。

いっそ捨ててしまおうかとも思ったけど、むちむちとした幹はもらったときと同じで、撫でればまだ生命を感じた。だから、捨てるのは踏みとどまっていた。

ガジュマルが枝だけになってしばらくして、ネットで「ガジュマル」「枯れた」「対処方」で調べた。どのページも、ガジュマルは生命力が強いから、枯れたと思っても、すぐには捨てないようにと書かれていた。葉が全部落ちてしまった場合には、温度管理を徹底する、土を変える、枝や腐った根を切り取るなどの対処方も書かれていた。

よかった捨てなくて良かったんだとほっとし、気長に葉がでてくるのを待つことにした。

最後に、最近吉本ばななさんエッセイを読んだ。例のガジュマルの精霊についての話。沖縄に旅行したとき、精霊になつかれ、そのおかげか、ガジュマルを枯らしたことがないそうだ。うらやましい。あたしの元へも、もう一度、戻ってきてくれないだろうか。おならも控えめにするし、自分で勝手に幸せになっているので、お願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?