誰かの見知らぬ王子様になりたい
気づかれないレベルの粋な親切がしたい。だって、ばれたらちょっとだけ恥ずかしいから。
最近立て続けに起こったちょっと恥ずかしい話をさせてください。
1つはレンタルCDショップに行った時のこと。
セルフレジでお会計をしているお母さんから少し離れて、3歳くらいの娘さんがプリキュアのCMが流れるディスプレイに夢中になっていました。迷子になるほど遠く離れているわけでもないけれど、お母さんが娘さんの動向を把握するのは難しい、といった距離感でした。
私は特に急いでいるわけでもなかったので、全力で走り出せそうな広い廊下をさりげなく塞ぎつつ他のディスプレイに気があるふりをしていました。
女の子に声をかけるか迷いましたが、それこそ娘さんとお母さんの負担にしかならないだろうと思いなおしました。
お母さんが無事お会計を終え、娘さんの方へ小走りにやってきたので私の仕事は終わりです。さてぼちぼち私も本の塊茎をするかと歩き出したところ、後ろから小さな声で「娘を見ていてくれてありがとうね」とお礼をいただいてしまいました。
いや、ばれてたんかい。
唐突なお礼を受け止めて返事ができるほど器用な質ではないので、あ、いえ、んふ、あは、と気持ち悪くどもった返事しかできませんでした。
もう1つは休日のショッピングモールでの出来事。
部活帰りなのか、二人の制服を着た子たちがちょうど前を歩いていました。制服がセーラー服だった人は共感できるんじゃないかなあと思いますが、セーラー服の襟がリュックの肩の部分に巻き込まれてクシャってなるの、かなりあるあるなんですね。しかも意外と自分では気づきにくい。
前を歩く子たちの一人がちょうどそうなってしまっていて、「まあバレないだろう」と謎の余裕を持って引き抜いて角を曲がったのですが、「さっき後ろにいた人が襟直してくれた!あの人!」と完全把握&元気に叫ばれまして、普通に指摘するよりも恥ずかしい事態になりました。
結局振り向く勇気も勝手なことをしたと謝る潔さもなく、うつむいて早足にさる一番ダサいムーブをかましました。
「なんでバレた時のことを考えていないんだ」と思うのは当然と思いますが、そんなことを考えていたら恥ずかしいが先に立って子どもも襟もスルーするほかなくなってしまうでしょう。それに、面と向かって言われたときに恥ずかしいのは相手も同じですから。本当は、襟やスカートが折れているのなんかは、相手にとって「何もなかった」を目指したいのです。
最後に名誉挽回の下心で成功体験を二つ。
お手洗いの後にスカートの一部が折れ曲がってしまうのは、これもよくあることなのですが、下に向かってはたきながら走り去ると「服を掠めていったちょっと迷惑な人」になれます。また、リュックの口が開いている人にリュックをちょっと押してやったときも、その後リュックの存在に気が向いてリュックを閉じてくれました。
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