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死ぬまで身分を追い求めるのが嫌なら #センセイを捨ててみる。

現代において大学へ行くのも身分を獲得するためである。つまり、能力を獲得するためではなく、身分の獲得が大学の目的であるところに問題がある

個性を重視した教育のために入試制度の是非がいろいろ言われているが、日本の親が自分の子が東大へ入ることが一番と思っている限り、変わりはしない。大学は身分獲得のために入学するものではなく、自分の能力を高めるために行くものである。身分的な感覚を払拭しない限り、日本に能力主義は根づかないであろう。

河合隼雄『いじめと不登校』

河合さんは「日本に能力主義を根づかせる必要性」を訴えているわけではありません。学歴社会において誰もが大学進学を目指すという理由の一つに、「身分を獲得するという目的」を挙げているんです。
 
私たちは例外なく、自他を比較し、優劣を競っている。それは生き物の端くれとして、避けることのできない行為です。あなたが自身のオリジナリティを追求したければ、常に誰かとの比較が必要でしょう。
 
ところで、「身分を獲得したい」という日本人の心性はどこから来たのでしょうか?
 
それは河合さんに言わせればこういう理路になります。

① 日本人は能力差の観念がなく順番がつけられなかったため、安心感を得るために「身分」を残した。たとえば「長幼の序」のような運命的な要素によって、序列を決定していた。

② 江戸時代の士農工商制度を崩す際、それに代わる身分尺度として、明治政府は「学歴社会」という制度を設けた。

③ 時代を経て、民主教育のもとに「能力」という考え方に移行したが、日本人はまだ完全に「能力」で人を評価するに至っておらず、妙な部分で「身分」を要所要所に残すことでバランスをとっていた。

④ そのため大学進学は、学歴社会において「身分」を獲得するための役割を担った。

河合さんの理路の解釈

ユニークだと思うのは、「日本人には、能力尺度はなじまない」と論じている点です。
 
何かができるとかできないとかいう視点で、人を見ない。その人を受け入れるかどうかは、おそらく同調性の高低にあったんでしょう。集団のしきたりを守れるのであれば、仲間とみなす、ということです。
 
一方で、集団を維持するためには、それが大きな集団になればなるほど、「序列」が必要になります。序列のつけ方は、「長幼の序」や「家柄・血統」など、長らく「運命的な」尺度が幅をきかせていましたが、文明化によって「学歴」という尺度が取って代わりました。
 
しかし、その尺度が「学歴」であれ他の何であれ、「能力」による区別は日本人の心性になじまない。結果、「大学進学」は「能力」に代わる「身分制」尺度として採用されたけれど、それはあくまで「身分」でしかないため、いつまでも内実が伴うことはない。
 
つまり、この日本において、大学進学によって個人の能力が磨かれることは、未来永劫ないわけです。受験勉強の果てに、「身分」が固定化されたに過ぎない。日本社会はわれわれ構成員に対して、「身分獲得のステップを生涯にわたってクリアし続けること」を求めているんです。


日本人が、民族的・歴史的経緯で「能力」尺度を内面化できない以上、「能力」とは異なる尺度を取り込む必要が出てきます。死ぬまで「身分」獲得のためにムチ打たれるのは誰でも嫌ですから。
 
現在求められているのは、「身分」に代わる尺度です。それは「能力」でも「学歴」でもない。
 
急激な人口減が予測されている日本において、多様性の尊重がひときわ叫ばれている日本において、能力や学歴の偏重は、現実的ではない。
 
いえ。
よく考えてみれば、これはおかしなことです。
 
人口が減っているから、多様な価値観を尊重すべきだから、ではなく、人の数が多かろうと少なかろうと、社会の趨勢が特定の方向へ向いていようといまいと、一人一人の価値観は大切ですよね。
 
誰にとっても生きやすい社会を目指す。
 
日本人にとっては、同調圧力に従うことが、よく言えば協調性があることが、「能力」尺度の上位にあった。ならば、今は能力ではなく、同調圧力にも頼らない、新しい尺度を作り出すときです。

ただ一つ言えることは、その「尺度」は「絶対的なもの」ではないということです。

何かを補完し、
何かに補完され、
ナイーブであるけれど捨てておけない。
時代とともにデリケートな変化を伴いながら洗練されていくもの。

納得解としての「尺度」が求められている。
その尺度は多様な解釈を可能にする余地を持ちながら、同時に普遍性の高いものであるはずです。


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思いつきと勢いだけで書いている私ですが、 あなたが読んでくれて、とっても嬉しいです!