教育の突破口 #センセイを捨ててみる。
東大に5年制新課程
27年創設 秋入学、分離融合型
東大が新課程(カレッジ・オブ・デザイン)を設立するという記事が2024年2月10日(火)の朝日新聞に掲載されました。目的は、世界的課題に対応できる人材の育成です。以下、記事の要点。
1.2027年秋に分離融合型の新教育課程を設立予定
2.学部4年間+大学院修士1年=5年間
3.うち1年間は留学やインターンシップに充当
4.秋入学
5.定員の半数に留学生を想定
6.授業は英語で実施
7.定員は1学年100人程度
国際競争力の向上。わかります。
では、どんな生徒が入学できるのか?
日本の新卒採用の時期には照準を合わせていないのは(合わせる必要がないとも言えますが)、「世界的課題に対応」するためです。卒業後は国外へどんどん出していくことが予想されます。
つまり、入学できるのは、
志が高く
学力が高く
一般人が簡単に経験できないことを経験している子、です。
しかし、上記3点を手に入れることができるのは、ペアレントクラシーの勝者です。
清水宏吉(教育社会学、大阪大学教授)は紙面でこう語っています。
経済力の強い家庭が文化資本を発揮する。ここで圧倒的な経験格差が生じます。清水(前出)は文化資本の格差を「目には見えにくいのですが、総合型選抜だと決め手になりやすい」と言います。
そして、その「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」といった「年内入試」で入学した大学生(2023年4月入学)が、初めて半数を超えたという記事が最近ありました(2024年2月19日付 朝日新聞)。
✔18歳人口の減少
✔大学側の早期志願者確保と、受験側の早期進学先決定を望むニーズ
双方の利害が一致していれば、大学生の早期入学は加速する一方です。
大学入試方式の多様化が進み、学力以外の「経験値」を評価基準として採用し、進学先の決定時期が徐々に前倒しされる。
こういった状況の中で力を発揮するのが、ペアレントクラシーです。
ところで、現役東大生ライターの布瀬川天馬は、面白い指摘をしています。
このケースなどは、ペアレントクラシーの最たるものでしょう。経済力が高く文化資本の強い家庭で育った子供は、塾で「高い学力」を手にれ、普通の家庭ではできない「経験」を積むことができているだけではありません。若い世代が積んだレアな経験は、自らが世界を変えるんだといった「高い志」に直結します。
志は、経済の影響を受けない。
いえ、本音は「受けてほしくなかった」。しかし現実は明確に「そうではない」ことを伝えています。
果たして「東大の新課程」は、ペアレントクラシーの影響を免れることができるでしょうか。私は難しいと思います。
それに、「新たな試みによって国際的な競争力が上昇すればそれでOK」、ということにはならないでしょう。時間の経過とともに、「新課程」もフレッシュネスを失っていきます。構成メンバーはいつの頃からか画一化され、それがひとつのブランドになり、知のメリトクラシーが再開します。
多様な人材を育成したい。
安定期を過ぎた今、どの企業でも、どの国でも、「多様性」を求めているはずです。均一化された能力や価値観を持つグループがウィルスに感染すればすべて死に絶えてしまいますが、そんな時に「変わり種」が混じっていれば、危機を乗り越えることができる。
どんなグループも、時間の経過とともに保守性を強固にするのは必然です。その中で危機を克服したい、新たな突破口を見つけたいと願うのであれば、多様性が不断に「混ざりあう機会」を持つことが必要になるでしょう。
濱中淳子(教育社会学者、早稲田大学教授)は、こう述べています。
何度も何度も、同じ言葉を耳にしてきました。それでもなお、同じ言葉が繰り返されるのは、シンプルで大切な思想だからでしょう。
個々の「文化」がヒエラルキーの中で閉じた世界を作り、互いにけん制し合うような事態が恒常化すれば、どんな斬新なプランを編み出しても「文化」の数が増えていくだけです。数が増えても相互理解が進まなければ、協力体制が整わなければ、危機も回避できないし、ブレイクスルーは起こせない。
大切なのは、多様な「文化」が「混ざりあう機会」を設定すること。
意図的に、何度でもです。
大学が、自身の生き残りをかけて、入試形態を含めた教育のあり方を本質的に見直すことに、異議を唱えるつもりはありません。
ですが、どんな斬新なシステムにもカバーしきれない落とし穴が潜んでいます。ならば、特定のシステムに過度の期待をかけるのではなく、すでに長い歴史を持つ「文化」が不断に混ざり合えばいいと思います。
「混ざり合い」は、種の維持のみならず、多くの課題を突破するための本質的な行為であると思うからです。
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思いつきと勢いだけで書いている私ですが、 あなたが読んでくれて、とっても嬉しいです!