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「展示力合宿inかなざわ」はじまりはデスゲームの予感から

 今は2023年10月31日18:51。「展示力合宿 in かなざわ」が明日から始まります、今日は参加作家の搬入日と顔合わせです、というタイミングでこのテキストを書いている。主催には文化庁までついてきてしまっている全国から作家を集めた鳴り物入りの企画である。
 今いる場所は金沢市民芸術村PIT5、倉庫なのか演劇舞台なのか、ホワイトキューブなのかストラクチャーなのかすべての中間であるような、ポテンシャルしかない!というような展示空間にいる。17:00までに参加作家がほとんど到着・作品搬入を済ませて集合している。

 15:30頃に会場入りした僕は、PIT5の机に並んでいる6人くらいの参加作家たちに「お通夜みたいな雰囲気っすねーー!」とニコニコでめちゃくちゃなテンションで声をかける。6人も黒い服着た人間が黙って並んでるんだもの、そういう言葉が出てきてしまった。応答なし。確実にヤバいヤツの入りで初対面は失敗…

 金沢・東京・大阪・山形・京都・広島、、、メンバーが集まった芸術村PIT5は美術関係者だらけの時に発生するあの微妙なカオス空気が流れ出す。なんとなくの自己紹介と明日以降のレクチャーの終了後は、在籍・出身大学ごとにパラパラと小さなグループができ始めていた。僕たちには直前になって共有された情報と、今もまだ共有されていない情報があるらしい。この後の流れが絶妙に摑めないまま、なんとなく知り合いと次の動きを待つ。この妙に段差の多いホワイトキューブの中には完全にデスゲームの雰囲気が出来上がり始めていた。デスゲームというのはわりとリテラルな話で、僕たちは明後日からゲームに放り出される。
 そもそも「展示力合宿」てなんだ!?て話である。ほんとうに「展示力合宿」てなんだ??僕もまだ全貌は掴めていないんですが、、という気持ちのままここにいる。ここで芸術村ホームページに記載されている情報を転載してみたい。

本企画は、有志のアーティストや美大生によって企画され、日本各地から作品を複数持ち寄り、期間中に一から展覧会を組み上げるための合宿である。
一般的に展覧会とはあらかじめテーマやコンセプトを打ち出した上で作品を選定し配置を決めていくが、「展示力合宿!」では、あらかじめコンセプトが規定されないまま、つながりを前提としていない作品群を用いて、参加者全員によりその場でコンセプトを考え、作品を選定し、配置などをディスカッションする。
つまり、展覧会を作り上げるプロセス自体に一体どのような関係性や力が働くのか、そしてそこにどのようなルールが規定され、排除されるのか。そういったやりとり自体を流動的なものとして公開することが、本企画での試みである。

「展示力合宿!inかなざわ 」概要

♢プレイベント 公開プレゼン
金沢市民芸術村アート工房にて、参加作家全員の作品紹介プレゼンおよび意見交流会を公開します。
♢第一部 公開合宿
本企画は金沢市内にある三つのスペース(金沢アートグミ、箔一ビル、金沢市民芸術村アート工房)を拠点に行われます。本企画は二部制となっており、第一部は参加作家が持参した作品を金沢アートグミと箔一ビルにそれぞれ振り分け、期間中に展示をその場で構成していく、そのディスカッションとインストール自体を公開するものです。

【各会場での内容】

金沢アートグミ
参加者26人全員がイヤホンをし、目線を合わせることも、ジェスチャーすることも禁止され、一切のコミュニケーションが取れない状態で作品設置を行う。本来綿密なコミュニーケーションを要するグループ展の搬入を事前のコンセプトもアイデアも何も共有されないまま一切のコミュニケーションを持たずに完成させる試み。
設置中はゲストが設営中の様子を見ながらリアルタイムでトークする公開実況解説を行います。

箔一ビル
参加者26人全員が毎日数時間にわたって綿密なコミュニケーションをとりながら展示の公開搬入を行います。作品を設置しながらビル全体の中でコンセプトやアイデアを搬入しながら出し合います。

金沢市民芸術村アート工房
毎朝10時から1時間半の間、1日の動き方や公開搬入の方向性を決める公開ディスカッションが行われます。また、13:00以降は、金沢アートグミと箔一ビルで行われる公開搬入の様子や各作家のメモ、アイデア、そして二会場で展示されなかった作品等を、映像・写真・文章等で展示する公開アーカイブを行います。

「展示力合宿 in かなざわ 」ホームページ概要より抜粋

 
 つまりアートグミの展示はコミュニケーションを遮断した状態で、非キュレーショナルな、展示と陳列ギリギリの間を行く試み ―ゲーム― である。それに対しての箔一ビルでは、合議とキュレーションによるバチバチの「展覧会」を目指すという内容だ。
 作品同士を媒介として、どう空間や意味づけが立ち上がり、そして自作が・自身がどう変化・規定されるのか/しないか。7日間で生まれるこの関係だったり空間の変化を注視してみたいとか思いながら、今は芸術村内の飲み会会場で倒れながらこのテキストを書いている。
 たぶんまだ全貌は掴めていないし、26名も参加者がいるこの企画の成り行きを本当の意味で掴めている人間は誰もいないだろう。とにもかくにも、明日から始まる僕たちの「プロジェクト"展覧会"」あるいはデスゲーム(?)に期待したい。
(23.10.31 21:31青木遼)

「展示力合宿 inかなざわ 」
[会 期]2023年11月1日(水)〜11月16日(木)入場無料
[会 場]金沢市民芸術村PIT5アート工房・金沢アートグミ ・箔一ビル
参加作家: 青木遼、 荒山莉子、 栗坂萌子、 伊藤日向子、 江口湖夏、 Munehiro OHTA / mooney、 小田浩次郎、 小野綾花、 酒井千明、 佐藤莉於、 白川真吏、 高升梨帆、 高山 晃、 寺林俊太、 中村さやか、ナギソラ、 西村颯貴、中西航基、 前田宗志、間瀬円也、 的野仁紀、 三ツ谷麻野、 森田碧、 森田翔稀、 吉田鷹景、 吉田コム

追記23:05
間瀬くんと帰り道、明後日から「工事現場みたいな現場」が出来るといいっすねーという話をした。さてどうなるのでしょうか。

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