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「ラプソディ・イン・ブルー」が背中を押してくれた

今回はガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」を弾こうと思った遠いきっかけ、弾き終わった後の思いを書きました。

ピアノの発表会でガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くまでの記録と演奏動画を載せた記事です↓

JAZZだったって⁈

発表会が終わって1か月以上経ったある日のこと。

音楽仲間が「ラプソディ・イン・ブルー」の演奏を聴いた感想を話してくれました。

「JAZZだったよ!
 聴きながらニタニタしちゃったよ!」


ん、JAZZだって⁈

実は、約20年前にJAZZピアノを"かじった"経験があります。

レッスンで先生が弾いたフレーズを真似して弾くことはできても、どこか表面的なまま。

なんかしっくりこなくて、音を楽しむ手前でフェイドアウトしてしまいました。練習量も少なかったと思います。

「ラプソディ・イン・ブルー」をやりたいと思った理由には、中途半端になってしまったJAZZへの未練とか、憧れもありました。

今回の演奏に対して「JAZZだったよ!」という感想を言われるまで、JAZZのレッスンに通った経験も失念していたくらいですから、JAZZの表現ができているとももちろん思っておらず、驚きました。

習ったフレーズの記憶が少し残っていたかな…

NYへの思いと憧れ

記憶を辿っているうちに、ニューヨークでJAZZを聴いたことも思い出しました。
少し脱線しますが、ニューヨークと音楽のことなので書いておきます。


2013年秋、ニューヨークにあるジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードへ行きました。

ヴィレッジ・ヴァンガードといえば、錚々たるジャズメンたちがセッションを録音したという、ジャズ好きの方ならきっとご存知のジャズクラブです。

老舗であり、お世辞にもきれいとは言えない狭いお店です。小さなステージに演奏者がギュッと乗っかり、演奏がはじまります。

確かその日のリーダーは、ジョン・コルトレーンの息子さんでした。ということは、サックスのセッションだったと思います。

おお、これがジャズか……‼︎


演奏者の身体の中の深いところから、リズムと音が生み出されるようでした。

人間というより音楽そのものなのではないか、音楽が人間の形になったのかと錯覚するようでした。

私にとって、JAZZはやるより聴くものだ!という思いが強くなりました。

それから10年後に、ピアノの発表会に出るなんて、しかもJAZZの要素を含む曲を弾くなんて、その頃の私は1ミリたりとも考えていませんでした。

「ラプソディ・イン・ブルー」の練習中は、ニューヨークで聴いた音や見た景色を何度も何度も思い出しながら試行錯誤しました。

当時の生きざまを追体験したい

「ラプソディ・イン・ブルー」の話に戻ります。

この曲名は、当初は「アメリカン・ラプソディ」だったといいます。

「ラプソディ」は日本語で「狂詩曲」。
民族的または叙事的な内容で、形式が自由な曲のことです。

ガーシュウィンは、ブルース、ジャズなど、いろんな要素を盛り込んで、アメリカの音楽とはこれだ!と示したわけです。

「氷河期世代」の私に、この曲の生まれた1910年代のアメリカの狂乱やアメリカンドリームを経験することはできません。

でも、この曲を通じて、当時の活気あふれるニューヨークで、夢を見ながら懸命に生きた人たちの生きざまを追体験してみたかったのです。

目標達成の先に感じたことは

自分の意思で、この曲を練習すると決め、1年以上毎日練習し続けました。自分で決めたこととはいえ、こんなに練習したのは初めてでした。

本番で弾き終わったとき、終わってホッとしたのに加えて、これまで経験したことのない気持ちになりました。

今までなら、何かが終わっても、できなかったことばかりに執着して自ら引きずり下ろした挙句、ポジティブな感想に引き上げていただくという(残念な)ことのほうが多かったです。

ところが今回は、ミスやうまくできなかったこともあったけどそれは言っても仕方ない。やれることはやり切ったと割り切れました。

そして、穏やかに自分自身を褒められるような、心がようやくひとり立ちできたような、安堵の気持ちになりました。

40代にもなって「ひとり立ち」ですかと突っ込まれそうですが、それも私だなと開き直ることさえできました。

夢をかなえたことよりも、長い練習期間の先に経験できた、満たされた気持ちのほうが宝物に思え、取り組んだプロセスさえも愛おしく感じました。

この曲には、人生のいいことも悪いことも丸ごと包み込んでしまうような、生命力がみなぎっています。そんな前向きなパワーに、私の人生も背中を押してもらえたように感じています。

(勝手に)ガーシュウィンへの感謝

発表会が終わってひと段落しましたが…

先日は、山下洋輔氏がソロを弾くラプソディ・イン・ブルーをサントリーホールへ聴きに行き、つい数日前も懲りずにガーシュウィンの関連動画を見てしまいました。

山下洋輔氏、サマータイムも素敵でした

曲名が目につくと、追わずにはいられない。

「ラプソディ・イン・ブルー」は、私にとっていつまでも憧れです。

100年前にこのような素晴らしい曲を作曲してくれたガーシュウィンに、(勝手に)心から感謝。


ピアノの練習は、これからも続きます。

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