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78.物欲ないんですよ、とあのときまでそう思っていました

物欲、と聞いて何を連想するでしょうか?

いい車、時計、オーダーメイドのスーツ、タワーマンション、高級料理……。

いろいろと思い浮かびますね。
どれも、日常かと言われればそうではなく、なかなか手に届かないようなモノのイメージです。

欲しいもの、というのが僕は全然ありませんでした。
困らなければそれでよかったし、高級という響きに惹かれることも特にありません。

物欲ありますか?と訊かれたら、「いやー、ないですね。欲しいものといったら、すげー広い書斎ぐらい?」と答えます。

さて、"物欲"とは、本当にないのでしょうか?

そんなとき、こんな質問をされました。

「物欲がないのなら、今と同じところに10年後も住み続けているのかな?」

……そう問われると、そうではないような。
いや、別のとこ住んでたいですね、と僕は答えました。

「今と同じものを、10年後も食べ続けているのかな?」

……そう問われると、そうではないような。
いや、ちょっとでもいいもの食べていたいですね、と僕は答えました。

「あるじゃん」

簡潔に、そう言われました。

「物欲、あるじゃん」

確かに。このままでいいや、と思っているわけではありませんでした。

少しでもいいモノを、少しでも、少しでも。

その思いがある時点で、欲、あるじゃんか、と。

確かに、と思いました。
ないんじゃなくて、考えたことがなかったのです。

向上心のない人はいないんじゃないか、と思いました。
本能的に持っているんじゃないかな、なんて。

考えてみると、面白いと思います。
新しい自分を見つけられるかもしれませんね。

僕も、願望は常に更新し続けます。

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