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第十章:小人村は大騒ぎ!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

その小川の両岸から少し離れた所に、小さなキノコの形をした屋根の屋がいくつも並んで立ってました。マボはついているのか、ついていないのか、小人の村を初めてたずねた人間になったのでした。

バレエ・児童文学 イラスト 素材(バレエ チラシ用・クルミ割り人形)|遥ナル (note.com)

今は昼下がりの午後でしたので、小人たちは仕事をすっかり終えていました。小人は人間のように夜遅くまであくせく働いたりしないのです。ですので、丘のすぐ下には川原の広い場所があるのですが、今はそこで遊んだり、歌ったり、踊ったり、乾杯しているではありませんか! 中にはもってきた椅子にゆったりすわり、パイプをくくらせ、煙の輪をうっとりと見あげている小人もいました。その他にも小川のすぐ近くで釣りをしているものもあれば、灌木にハンモックを吊って眠っている小人もいます。火をくべて木の実を焼いておいしそうにほおばっている者もあれば、お弁当を広げながら楽しそうにおしゃべりしている小人もいるのです。その様子はとてものどかで、楽しそうでした。

マボはすっかり目を丸くさせ、小人たちの様子を丘の上から見ていました。1時間でも2時間でも眺め続けていても飽きないほど、楽しい気持ちになっていたのです。

「みんな、マボさんをつれてきたよー、マボさんは子供なのに、妖精の騎士なんだよ~!」
チャッピが大きな声で丘の上から呼びかけましたすると、どうしたのでしょうか…。小人たちは丘の上のマボを見つけた途端に、歌うのも踊るのもやめてしまいました。誰も口もきかず、一瞬シーンと静まり返りました。そして、瞬く間に小人たちはすべてを放りだして、自分の小屋に逃げ帰ってしまったのです。あとには木の実やキノコを焼いているたき火が残って、パチパチいうばかりでした。

無理もありません。妖精の間では人間は評判は全く良くないのです。自然を好き勝手に壊してしまうし、動物を食べても感謝する人は減ってしまいました。ですので、小人族は人間のことを「邪悪な人」「やっかいすぎる隣人」「迷惑な生き物」などと呼んで嫌がりこそすれ、歓迎などすることはありませんでした。しかも、秘密の場所にあるこの小人の村に、やってこれないはずの人間がやってきたので、面食らったのです。これは、チャッピたちが道案内したからなのですが、他の小人はそんなこと全く知りませんでしたからね。

つづく

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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