難しい判断1-サイレント ネオ-ムーン ソング

西門奪還という見事な初陣を飾ったシャローン。その足でシャローンは提督の戴冠式にのぞみ、晴れてムーンキングダムの提督に就任した。
メルセデウス18世の誕生である。

政庁・会議の間では新任した提督を迎えようと、ムーンキングダムの家臣たちが集結していた。
しかし、内憂外患を抱える情勢の中、家臣たちは複雑な表情をする者も多く、重苦しい雰囲気に包まれていた。
特にシャローンの提督就任には、重鎮派と呼ばれる老臣を中心に拒否反応を示すものも少なくはなかった。
重鎮派は若く経験が少ないシャローンよりも、エビルの弟であるアービン・メルセデウス(キンコム提督代理)を推していた。
しかし、伝統的に血統主義が重んじられる点、隠然と力を持つ参謀府の後ろ盾もあったため、シャローンが提督に就任することとなった。
とはいえ、シャローンの就任に納得していない家臣が多くいることは、その表情から明らかだった。
加えて、主力だった大黒柱を複数失い、今後を憂いて深刻な表情をしている者も少なくなかった。

こういった背景から、家臣の中には不満や心配を隠さないものまで現れる始末だった。
「まだ、19歳の娘が提督になるとは…ムーンキングダムももう終わりじゃ」
「そうだのう、いくらエビル様の一人娘とはいえ、戦の経験もまるでない者の指揮など従えんわ!」
「同意する。これから我々は北閥と戦わねばならんのに、これではお先真っ暗だ!」
「うむ、そうであるならば、エビル様の弟君であるキンコムを守られるアービン様の方が適任だと思うが…」
などと言っている。

末席に加わったシャルル・コンクエストはこの会話を聞くと、
「そういうことは、シャローン様がお見えの時におっしゃるべきだと思うけどなあ…」
とみなに聞こえるような大きな独り言をつぶやいた。
コンクエストの隣には、ゼ・マリアやソル・エルメールというシャローンが共に士官学校で学んだ若者の姿もあった。
シャルルの独り言に苦虫をかみつぶしたのが、老臣グリフォンである。
「この若造めが、いい気になりおって! いくらコンクエスト家の跡継ぎとはいえ、口は慎むべきである。
兵法のなんたるかもわからずに、そのようなことを言うべきではない!」
シャルルは意に介さずにそっぽを向いた。
グリフォンは鼻息を荒くして「これだから、近頃の若いもんは…」
とぶつぶつ言っている。

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