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第十章:小人村は大騒ぎ!?4 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

淡い紫色の癖っ毛をしている彼女こそ、ミィちゃんでした。ミィは危険をおかして森に入ったチャッピ達の大事な大事な友だちでした。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

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「ミィちゃん、大丈夫かい!」
チャッピがうれしそうに声をかけました。
「うん、ありがとう! あなたたちこそ大丈夫なの…?」
戸の間から半分だけ顔をのぞかせ、マボの方を心配そうに見つめています。”人間なんかと一緒にいて大丈夫?”という意味なのです。
「大丈夫だよ、ミィちゃんも怖がらずに出ておいで…ここにいるのはマボさんだよ。マボさんの首にかかっているメダルを見てごらん!」
それは、キッチュがマボにかしてくれた、確かに妖精の騎士だけがつけることを許されるエルフのメダルでした。
「マボさんはね、僕たちのためにこの村に来てくれたんだよ。とっても強いんだよ、だって、妖精の騎士なんだもの! きっと力になってくれるさ、ねえ、そうだよね!」
チャッピが言うと、デカもチビも「そうだよ、そうだよ、きっとそうだよ!」と口を揃えました。
「ねえ、マボさん!」
チャッピが真剣に、それでいて力強く言うものですから、マボは思わずうなずきました。

実を言えばマボは一度も自分を「妖精の騎士」とは言っていませんでした。チャッピ達が勘違いしているだけなのですが、マボははっきり”僕は妖精の騎士ではない、ただの子供だよ”と言うべきだったのです。しかし、そのタイミングを逃してしまい、物事はどんどん大事になっていきそうな予感がしてきたのです。

すると、ミィだけなく、その家族―お父さんもお母さんもおばあさん、おじいさんも戸をあけて出てきたのです。そして、マボを取り囲みました。
「ああ、本当だ、このまばゆいばかりに光るメダルは、妖精の騎士だけがつけることが許されるメダルじゃないか! ああ、こんな素晴らしいものを生きている間に見られるなんて、長生きはするもんじゃ」
とおじいさん小人が言ったのです。
「本当にそうですとも、妖精の騎士が来てくださるなんて、なんてありがたいことなのでしょう!」
おばあさん小人がうなずきました。
「母さん、これでミィもきっと助かるだろうねえ、本当に神様は我々を見捨てたりしなかったんだねえ」
とお父さん小人は母さん小人の手を取り、目を見つめて言いました。いったい、何が彼らに起きているのでしょう、マボは全く知りません。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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