見出し画像

第十章:小人村は大騒ぎ!?5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「本当にそうですとも、妖精の騎士が来てくださるなんて、なんてありがたいことなのでしょう!」
おばあさん小人がうなずきました。
「母さん、これでミィもきっと助かるだろうねえ、本当に神様は我々を見捨てたりしなかったんだねえ」
とお父さん小人は母さん小人の手を取り、目を見つめて言いました。いったい、何が彼らに起きているのでしょう、マボは全く知りません。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

5

「本当にありがとうございます、マボ様。それに、チャッピ、デカ、チビ、本当にありがとう!」
 ミィはマボをこう呼ぶと、ついには涙を目にためたのです。マボはすっかり困り果てました。しかし、この様子を他の小人たちもしっかり小屋の中から見ていたのです(小人たちは目も耳もとても良いです)。ですので、マボが噂に聞くような悪い人間ではないとわかったのでしょう。本来は好奇心旺盛な小人たちです。安心していっぺんに戸をあけて出てくると、あっという間に十重二重にマボたちを取り囲んだのです。その小人たちの数は300近くもいたので、すっかりマボはお驚き仰天です。しかも、口々に、
「妖精の騎士が訪れた!」
「そうだとも、しかも、良く見りゃ、かわいい子供じゃないか!」
「ああ、本当に。しかし、メダルは本物。きっと名のある妖精の騎士に違いない」
 などと、褒めたたえているのでした。

少したつとチャッピがわざとらしく咳を一つして、マボの紹介を始めました。
「こちらは妖精の騎士のマボさん、僕らとは友達になったんだよ!」
 チャッピが言うそばから、小人たちがざわめきました。
「おい、友達になってくれたんだって!?」
「偉い妖精の騎士なのに、何てフレンドリーなんだ!」
「これはただものではない!」
 と、どんどん、どんどん、マボのことを凄い人だと思い込んでいるようでした。何度も言いますが、本当のマボはただの子供です。

  自分の村に帰れば、”ガラクタ集めのマボ”と呼ばれこともあるぐらいなのです。妖精の騎士は悪鬼や妖鬼、ゴブリンやトロルだって倒してしまう力があります。それどころか噂では、地の果て、永遠に噴火を続ける火山のふもとにすむという兇悪な竜とさえ戦ったと言われています。しかし、マボはネズミをみただけで、布団をかぶってしまうこともあるぐらいの怖がり坊やだったのです。そのマボを今や小人の村の住人は、英雄が現れたとばかりに大歓迎を始めようとしているのです。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

ご覧いただきありがとうございます!