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第十章:小人村は大騒ぎ!?6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

しかし、マボはネズミをみただけで、布団をかぶってしまうこともあるぐらいの怖がり坊やだったのです。そのマボを今や小人の村の住人は、英雄が現れたとばかりに大歓迎を始めようとしているのです。

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それから、小人たちは歓迎の宴をしようと、ちょうどマボ達がきた丘の下に集まりました。この小川の前は広場になっているので、お祭りなどの会場になるのです。ここに小人たちがめいめい、焼き菓子やらドーナッツやら果物などごちそうをどっさり持ち寄って、マボを歓迎しようというのです。いつの間にか空は橙色に染まり、お日様は西の地平線に姿を隠そうとしています。

すっかり背の曲がった長老の小人も到着すると、マボの隣に座りました。マボの左横には今回の立役者、チャッピ、デカ、チビが座ってます。3人はすっかり得意げな表情です。小人たちは火を取り囲むように座りました。マボ達の前にはおいしそうな御馳走が並べられました。小人サイズの小さいものですが、たくさんの果物、木の実やキノコを焼いたもの、クリームたっぷりのケーキ、トマトソースがかかったスパゲッティや野菜シチュー、豆入りの焼き菓子など盛りだくさんです。マボは正直に騎士ではないと明かしてから御馳走を食べられたら、どんなにおいしいと感じられたことでしょう。御馳走を目の前にしているというのに、マボはあまり食欲が湧きませんでした。そのマボの横でチャッピ達が、おいしそうに口いっぱいに御馳走をほおばっています。

さらに、しばらくすると小人たちはたき火をぐるぐる回るように歌い、踊りだしました。何人かはギターやバイオリン、フルートや小太鼓、チェロ、ハーブなども持ち出し、演奏を始めています。それは美しく、陽気で、聞いたこともないメロディーでした。夕日が沈んで空はすっかり暗くなり、青白く光る真ん丸に近いお月様が、ぽっかりと闇に浮かんでいます。また、たき火を囲み、音に合わせて踊る小人の影がゆらめくものですから、何ともいえない幻想的な雰囲気を醸し出しているのでした。小人たちはみな楽しそうにしていますし、そのうれしそうなことと言ったらありません。しかし、マボの気持ちは沈んだままでした。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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