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来襲シュトライツァー党!-ルーゼンフェルム攻防戦2-サイレント ネオ-ムーン ソング

ルーゼンフェルムの大将であるリヲル・ツォングは、すぐさまシャローンに援軍を求めたが、返事は芳しくなかった。
シャローンの言葉を伝えに来た斥候隊隊長のデニ・オムは、かしこまりながら指示を伝えた。
シャローンからは”可能であればキンコムから援軍を差し向ける”というものであった。さらに、シャローンの指示は”籠城策”である。
キングダムを取り巻く不利な状況を、シャローンが打開する時間を稼げと言うことだ。
都市に籠って時が過ぎれば、あわよくば援軍がきて、ルーゼンフェルムを守れるかもしれない。しかし、援軍がこないということは捨て鉢になれということに等しい。

ルーゼンフェルムの政庁で軍議を開くツォング党に、援軍が期待できないことが知らされると、大きな動揺が走った。
ツォング党の中枢ははほぼ一族で構成されているが、何人かは一族ではないものも含まれていた。
ツォング党随一の猛将とうたわれるリフ・シャールもその一人だが、彼は猛将の多くがそうであるように、意見を言わずにはいられない性格だった。

「ツォング様、はっきり申し上げるが、シャローン閣下は何を考えているのか、理解でき申さぬ。援軍を送れぬとは、ルーゼンフェルムとツォング党を見捨てたも同然ではありませんか!」
「まさにその通りでござる。これはにわかに受け入れらる命令とも思いませぬ」

智将でならす将軍のルシエも、リフ・シャールに同意した。
常に何かしらの香水をつけているルシエは、男でありながら金色の髪を伸ばし女性のような風貌をしていた。

「デニ・オム大尉、どうか、もう一度戻ってシャローン様に、再度援軍を送っていただくよう頼んではいただけないだろうか?」

家臣の意見を受けリヲル・ツォングが頭を下げて頼むと、デニ・オムは控えめに首を横に振った。

「無理でござる。キングダムの取り巻く状況は、みなさまが御承知の通り深刻。特に日和見主義者、南西テーラバハのモーリス党は妙な動きを始めておりまする。
キングダムを空ければ、北門、南門と語らい、強襲する可能性これあり。
シャローン様は状況を打開するため、まずは北門、南門の奪還を目指す考えにござりまする」
「そうか…キングダムの状況も深刻であるな、シャローン様のご心中、察するに苦しいところであろう…」

状況的にはリヲルも非常に苦しいが、まずシャローンをおもんばかるあたりが、ツォング党の忠誠心だった。

「リヲル閣下はあまりに人が良すぎまする。聞けば、シャローン様はまだ20歳にもなっておられぬとか。
若すぎるゆえ、兵法のなんたるか、理解しておらぬのではござらぬか!?

リフ・シャールが納得がいかずに言った。

「リフ、言葉を控えよ。シャローン様はエビル様の血を引くたった一人の御方。我らツォング党、メルセデウス家に命を預けておる。そのメルセデウス家のシャローン様の御命令とあらば、たとえ燃え盛る火の中にでもとびこむ覚悟よ。そうではないか、リフ・シャール!」
「確かにその通りでござるが…」

リフ・シャールはリヲルの覚悟に押され、言葉が続かなくなった。
すると、デニ・オムが口を開いた。

「シャローン様がおっしゃるには、ツォング党は家中でも随一の結束を誇っているとおっしゃられました。
ゆえに、信頼してルーゼンフェルムをお任せするとのお言葉にございます

それを聞くと、リヲルは武者震いしてから強くうなずいた。

「さすがはシャローン様、よく我らツォング党のことをわかっておられる。
デニ・オム少尉、シャローン様にしかとお伝えください。
このツォング党、シャローン様の期待に応えるためルーゼンフェルムを死守すると!」
「わかり申した。我が斥候隊はツォング様にお力を貸すように言われてござる。配下にツォング様のお言葉、しかと伝えさせましょう」
「うむ、頼む。さあ、ものども、戦の準備を急げ!」

こうして、ツォング党の意見はまとまったのだった。
つづく…

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