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東京タワーに行ったんだ。

 東京タワーに行ってきた。
 いつもは無口な人がつぶやいた。思い出があるという。

 子どもの頃に一度行ったきり。伯父さんの結婚式の前か後かに母と二人で行ったんだよな。
 どうして東京タワーに行ったのか、そのへんの記憶はあいまいだが、母としては、せっかく上京したのだから子どものためにどこか、ということだったと思う。
 今日行って印象的だった公園も寺も、全然覚えていなかったし、こんな坂の上にあるということも記憶になかったなぁ

 話はそれぎり、東京タワーの入り口をくぐった。

 展望台のチケットを買う。展望台は150mと250mと2カ所あるのだが、250mの方は早くても1時間後の予約になる、と言われ150mだけの切符を買った。駅からここまで時間がかかりすぎてしまい、帰りの電車を考えるとあまり時間がない。

 芝増上寺が真下に見える。増上寺は、災害の際の支援の役割があるらしい。大正末期・関東大震災のときもいろいろあったと、案内の方が解説していた。そういえば、境内に「聖観世音菩薩」があったが、上からはわからない。
 高校がある、墓地がある、古墳がある。と真下ばかり見てしまった。回廊のように左手にガラス窓の通路が湾曲する。眼下に隅田川と橋がいくつか見えてきた。道路が割とまっすぐ西へ向かっている。 ビルが林立して遠くが見えにくい。富士山はどこだろうか?北に向かい、スカイタワーは・・・見えた。それで一周だった。もう一度、ゆっくり回っていく。海の方、以前行った(見た?)ルートを確認して頭の中の地図を修正する。
 浜離宮。このあたりを小兵衛は駆け抜けている。浜離宮のことを浜御殿?そんな風に言っていたと思う。

 何枚か写真を撮って、それで降りてきてしまった。

 東京タワーの前にはアンテナがあって、もう、テレビ塔の役割が終わったのだなと実感する。
 振り返ると、修学旅行らしい学生さんがメディアセンター前で行列していた。坂を下りていくと、昼前の時間だからだろう、豆腐屋の前にも行列があった。外国の方の姿も多く、コロナ禍が終わったことを実感した。
 コロナ自体は消滅することはないだろうが、今度のパンデミックは終焉に向かう。またいつか(ある人の言によれば、彗星が再訪したら)、新しい流行病が始まるだろう。その波の低からんことを。

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