剣客商売第12巻 第4話 十番斬り
正月15日。小兵衛は、町医者小川宗哲宅で村松太九蔵を見た。
その名におぼえがあった。20年前・・・村松忠右衛門という剣客、一度会いたいものと思っていた。その忠右衛門が亡くなった。小兵衛は悔やんだが、思い出すこともなくなった二年後のこと。息・太九蔵が、四人の剣客を相手に決闘し、四人を只一人で討ち果たし、江戸を立ち退いたと噂。
その太九蔵が四十前後の中年となって、小川宗哲宅へ重病の身をあらわそうとは、おもいもかけぬことであった。
死病を抱えた男が、治療を受けようとする、