剣客商売第12巻 第5話 同門の酒
毎年の二月(現三月)十日の夕刻前に集まり、辻平右衛門門下の高弟たちが酒食を共にして語り合い、会場はここ数年、弥七の武蔵屋。
最初(30年前)は十名であったものが、一昨年からは四名<秋山小兵衛、神谷新左衛門(68)、内山文太(75)、矢村孫次郎(43)>となった。
矢村がこなかった。無断欠席である。次の日、小兵衛は見舞いに行く。
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切絵図はお借りしています。出典:国会図書館デジタルコレクション
ではでは。机上ツアーにお付き合いいただけますよう。
地図(画像)
地図1 同門の酒
➀武蔵屋にあつまる四人の場所は・・・二人は近く二人は遠い。
内村文太(②井筒屋)、神谷新左衛門(屋敷は③四谷・坂町)
小兵衛(④鐘ヶ淵)、矢村孫次郎(⑤目黒の西感寺)
地図2 目黒へ向う(2/11)
小兵衛は駕籠で、弥七は付き添った。
この旅程は、『小兵衛と弥七が西感寺に到着してみると』の一行。
グーグルマップのおすすめは、↓でした。ほぼ2時間。
地図3 饅頭屋へ
西感寺についてみると、果たして、矢村孫次郎は行方不明状態。
弥七が思い出したのは、必ず持ってきてくれる土産の饅頭。
二人は、饅頭屋へ行くことにします(徒歩)。
こっちもグーグルマップで調べてみると・・・3.7㎞ 52分でした。
地図4 西光寺脇の浪人の家(後で盗人宿と判明)
茶屋の老婆は、白金六丁目から三鈷坂を下って来る時、矢村を見かけた。
現在は三光坂と表記。長い坂で、白金の通り辺りから?切絵図では、|||||のマークは、上杉屋敷辺りから続く。
『195)蕎麦屋を出て、二人は⑩三鈷坂の下の道を右へ折れた。
右側は竹藪。左側は⑭西光寺の土塀が続いている。・・・
木立を抜け、二人は⑬浪人の家へ近づいて行った。』
小兵衛と弥七は、西光寺と小ヤシキとの間の道を行き、百姓地あたりへ出たと考えられる。
小兵衛が矢村の名を出して声をかけ、去る(弥七は見張りに残る)。思った通り、女が出て来た。それを弥七が追っていく。
地図5 女は道玄坂上の茶店へ
⑪四ノ橋から、渋谷川を北へ渡り、西へ。渋谷川沿いを西へたどり、道玄坂(渋谷川を渡って西)へ。坂の上の茶店へ入った。
矢村を連れ、浪人の家へ!矢村の活躍で逮捕、大掛かりな捕り物へ発展した。
事件は単なる人違いから始まったと発覚。落ち込む矢村。・・・でした。
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地図データ
以下、地図を書くために、本文を抜き書きし、場所を特定するために切絵図を参照しています。
本文抜書の『51)』等は、文庫本のページ数です。
同門の酒(2/10)
179)毎年の二月(現三月)十日の夕刻前にあつまり、酒食を共にして語り合うことになっている。
180)十名が、一昨年から四名になってしまった。矢村が欠席した。
※秋山小兵衛、神谷新左衛門(68歳)内山文太(75歳)矢村孫次郎(43歳)
180)ここ数年、➀四谷伝馬町の料理屋〔武蔵屋〕で行われている。
武蔵屋だと内村が住み暮らす②井筒屋からも近く、神谷の屋敷も③四谷・坂町ゆえ、これも近い。
小兵衛は川向こうの④鐘ヶ淵だし、矢村孫次郎は⑤目黒の西感寺という寺に寄宿する・・・遠いので身内同様の弥七の家へ二人して泊ることにしていた。
目黒へ向う(2/11)
183)翌朝・・・。
小兵衛は町駕籠をよんでもらい、目黒へ向った。弥七は駕籠に附きそった。
西感寺は、目黒村の⑥金毘羅大権現の少し先にあった。
★顔なじみの若い寺僧が「昨日は昼にそちらへ」と。
187)「例の饅頭・・・(弥七宅への手土産)」
その饅頭とは、⑫麻布元村町の遍照寺という寺の門前にある〔佐野六〕という茶店
188)小兵衛と弥七は、⑦大島大明神の横手の道を急ぎ、⑧権之助坂から⑨白金の通りを四丁目までいき、⑩三鈷坂を下って⑪四ノ橋を麻布川へ渡った。⑫茶店〔佐野六〕
佐野六のおかみの話
189)女連れ・・・「あの女は⑭西光寺の裏に住んでますよ」
茶店の老婆は、四日ほど前に、件の女と矢村が連れ立って歩いているのを見た。
191)老婆の親類が白金六丁目で酒屋をしており、その帰り途、⑩三鈷坂を下って来ると、⑭西光寺の横手の道へ入って行くのを見た、という。尾けるともなく、二人の後ろからその道へ入って行くと、崖下の木立の中へ、二人が消えて行くのが見えた。
尚も近づいてみると、木立の向うに⑬茅ぶきの一軒家があった。
194)四ノ橋をわたったところに〔笹岡屋〕という蕎麦屋があったので、二人は腹ごしらえをした。
195)蕎麦屋を出て、二人は⑩三鈷坂の下の道を右へ折れた。
右側は竹藪。左側は⑭西光寺の土塀が続いている。・・・
木立を抜け、二人は⑬浪人の家へ近づいて行った。・・・
声をかけ、
「こちらに、矢村孫次郎と申す者が来ておりませぬか?」
浪人はとりつくしまもない。
200)小兵衛は蕎麦屋へもどり、弥七はそのまま張りこんでいる。
弥七が蕎麦屋へ飛び込んで来たのは、それから半刻後のことである。
「女が、いま、この前を通り過ぎて行きました」
弥七が尾行、少しずらして小兵衛も続く。
道玄坂の茶店(2/11午後)
女は⑪四ノ橋を渡ると、⑮渋谷川に沿った道を西へ行く。
約半刻後に、件の女は渋谷へ出て、⑯渋谷川に架けられた橋を西へわたり、⑰道玄坂をあがって行く。世田谷から多摩川へ通じる道筋だけに茶店が二つほどある。
その一つは、人家をはなれ、⑰道玄坂をあがりきった左側にあって、深い竹藪を背にしていた。女は、この⑱茶店へ入って行ったのである。
207)女が去ったあと。
「大先生。おもいきって、こんなのはいかがでございましょうか?」
「御用聞きが、泥棒になるのか」
「それなら向うもこっちの正体にきづきますまい」
二人で押し込んで後手に戸を閉め、店員は気絶させ・・
押入れの下に蓋がついている。ーーー矢村孫次郎がいた。
211)それから一刻後に、小兵衛・弥七・孫次郎の三人は、おときと浪人がいる⑬西光寺の横の家の前に立っていた。
214)翌日のうちに、略、事情がわかった。
「あいつだって、同じ盗っ人でござんすよ、前川為之助って」(人違い)
===>大捕り物になった。
後日、神谷新左衛門と内山文太の耳にも入ってしまい、孫次郎は二人に武蔵屋によびつけられ、叱られた。
孫次郎は浮かぬ顔をしてついて来た。
「叱られたのを気にしているのか?気にするな」
孫次郎が気にしていたのは別のことだった。
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