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悩みの構造と対処法 -考え方を変えてみる-

30歳になり、管理職にもなると、以前よりもメンバーや後輩から悩みの相談を受ける機会が増えました。

ビジネスにおいては「事業か理念か」や「自社か顧客か」などが、キャリアにおいては「組織か自分か」や「お金か経験か」などが、よくある悩みになりがちです。

自分自身も同様に、これまでの社会人人生で、上司・先輩に悩みの相談をし、多くのアドバイスをいただきました。

メンバー・後輩の悩み相談に乗っているうちに、これまで自分が上司・先輩からいただいたアドバイスが点と点でつながったので、仕事に悩む新卒時代の自分に向けて「悩みの構造と対処法」を自分なりにまとめてみました。

結論、「自分自身の考え方を変える」ことが悩みに対する最善の対処法だと考えています。


悩みの構造 -相反する選択肢-

悩みが生じているのは「相反する2つ以上の選択肢がある」からです。

AかBかの選択肢があり、明らかにAが良いという状況において悩むことは少ないです。

AかBかの選択肢があり、どちらにも良さがある状況において悩みが生じます。どちらかを残し、どちらかを捨てる。その決断に痛みが伴うからこそ、決めることができないのではないでしょうか。

前述の通り、ビジネスにおいては「事業か理念か」や「自社か顧客か」などが、キャリアにおいては「組織か自分か」や「お金か経験か」などが、相反する選択肢としてよくある悩みになりがちです。

悩みの対処法

「相反する2つ以上の選択肢がある」状況において、対処法は大きくは以下の2つです。

1.「痛みを覚悟して、AかBかを選ぶ」

1つ目の対処法は「伴う痛みを覚悟して決めること」です。極端な生き方・働き方に振り切ってしまえば、「AかBか」を決めるのは容易です。

ただし、それができないから多くの人は悩みを抱えるわけであり、自分自身も悩んでいました。何かを諦める選択肢は分かりやすい対処法ではありますが、後悔する怖さがあります。

2.「AもB併存するように考え方を変える」

2つ目の対処法は「考え方を変えること」です。どちらにも良さがある選択肢において、「相反するAかBか」ではなく「併存するAもBも」を選ぶことができたら、そもそも悩む必要性すらなくなります。

考え方を変える

どのようにすれば、「考え方を変えること」ができるのか。結論としては、「物事を解釈する時間軸、空間軸を変えること」により可能になります。

世界をどのように解釈するのか

「情報量」と「前提」によって、「解釈」が生まれます。

すなわち、「何を見るのか」と「どのように見るのか」によって、「世界をどのように解釈するのか」が決まります。

世界は何で構成されているのか

(物理学の難しい話はさておき、)世界は「時間」と「空間」で構成されます。

したがって、「どのように見るのか」とは、「どの時間軸、どの空間軸で物事を見るのか」と言い換えることができます。

時間軸・空間軸を持ち替える

その物事を解釈するのに適切な時間軸・空間軸を持てていないと、選択肢が矛盾するように感じて、悩んでしまいます。

適切な時間軸・空間軸に持ち替えることができれば、一見して相反するような選択肢も、併存するようになり、「AかBか」ではなく「AもBも」と考えることができます。

ビジネスにおいて「事業か理念か」や「自社や顧客か」で悩んでいるとします。例えば、事業としては市場でNo.1にしたい、理念としては顧客志向を貫きたいなど。

この場合、短期の狭い範囲で解釈をすると、「事業で勝つためには、顧客を犠牲にしてでも自社を優先しなければならない」、もしくは「理念を貫くためには、自社を犠牲にしてでも顧客を優先しなければならない」などです。

しかしながら、長期の広い範囲で解釈をすると、「中長期的に顧客を支援するには、そもそも自社が存続していなければ叶わないので、利益を上げなければならない。同時に、顧客に不義理なことをしてしまっては、段々と顧客から選ばれなくなり、結局は自社のためにもならない」と考えられるようになります。

時間軸・空間軸に対する考え方を変えれば、「AかBか」ではなく「AもBも」になるので、そもそも悩む選択肢ではなくなります。

”適切な”時間軸・空間軸を持つ

上記のような例を出すと、「視座が高い方が良い」、「視野が広い方が良い」などの前提から、「長い時間軸、大きい空間軸で物事を見るべきだ」と思ってしまう方もいるかもしれません。

しかしながら、短期の狭い範囲のことを考えるべき場面で、長期の広い範囲の尺度を持ち出すと、それもまた悩みを生み出す原因になります。

例えば、上司・先輩から見たら十分に頑張っているのに、「自分自身に自信が持てない」という悩みを抱えている新卒がいるとします。「自信を持つべきか、謙虚でいるべきか」という相反するような選択肢で悩んでいるような状態です。

「今日1日の自分自身」を評価するべきタイミングで、自身より長いキャリアがある先輩社員と比べて必要以上に長い時間軸だけで自身を評価してしまうと、「自分自身に自信が持てない」という悩みに囚われてしまいます。

「今日1日の自分自身」を評価するならば、1日という時間軸で、自分の仕事という空間軸で解釈し、「その日をやり切れた」と思えれば自信を持てばよいです。同時に、「10年後の自身のキャリア」を評価するならば、10年という時間軸で、先輩を含む組織という空間軸で解釈し、「まだまだ成長しなければならない」と謙虚であればよいです。

「どのように見るのか」、「どの時間軸、どの空間軸で物事を見るのか」は常に一定ではなく、「何を見るのか」に応じて適切な見方をするべきだと思います。

「どのように見ているのか」に対しては無自覚

簡単な話ですが、いざ考え方を変えるとなると大変です。なぜならば、そもそも自分が「どのように見ているのか」に気が付けないからです。

自分が「何を見ているのか」に対しては自覚的です。それに対して、自分が「どのように見ているのか」に対しては無自覚であることが多いです。

自身が「どのように見ているのか」と常に考えながら生活していたら、キリがないし疲れます。高いビルから地上を見たときに、「人が小さく見える」とは思いますが、「視野角 (目で見える範囲)の中を物が占める空間が変わったことにより、人が小さく見える」なんてことを考える人は相当珍しいです。

「どのように見ているのか」を洞察する

とはいえ、悩みが生じているとき、選択肢のどちらかを切り捨てることができないとき、自分自身が「どのように見ているのか」にアプローチして、「どのように見るべきか」を導き出し、AもBも併存する考え方に持ち替える必要があります。

毎日の日記や日報などで、一日の振り返りをしている人は多いかと思います。しかしながら、多くの人は「その日に何をしたのか」などの「何を見たのか」については振り返るものの、「どのように見たのか」については無自覚であるが故に振り返ることが出来ていないケースが多いです。

見えているものをよく見ることが観察であり、見えていないものを見ることが洞察です。自分自身の悩みを解消したければ、「何を見ているのか」を観察するだけではなく、「どのように見ているのか」を洞察する必要があります。

考え方を変えて、悩みに対処する

「相反するAかBか」で悩んでいるのであれば、「時間軸・空間軸」を持ち替えることで「自分自身の考え方」を変えて、「併存するAもBも」と解釈するようにできれば、きっと悩みも解消できるでしょう。

ただし、それはあくまでも、悩みを取り除き、一生懸命に物事に取り組むための第一歩でしかないです。「どのように見ているのか」が変わっても頭の中の認識世界が変わるだけであり、「何を見ているのか」の目の前の現実世界が変わるわけではないです。

現実を理想に近づけるために自分自身に向き合うのであり、望ましくない現実を受け入れるために自分自身に向き合うのではないです。内省だけではなく行動までつなげるために、自分自身に向き合い、考え方を変えてみましょう。

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