02:「トレゾール~魔法の宝箱~」

とある小さな村に、エミルという少年が住んでいました。エミルは心優しく勇気のある少年です。
エミルはいつものように森へ枝を拾いに行きました。
ところがどうしたことか迷子になってしまったのです。
真っ白な霧がたちこめて、右も左もわからなくなってしまいました。

すると森の奥かから一筋の光が差し込み、その光の筋道だけ霧が晴れていきました。
エミルはその光をたどっていきました。

しばらく行くと開けたところに出ました。
毎日のように森へ入っているのに、はじめて来るところでした。
見たことのない朽ち果てたお城が建っています。
廃墟だというのに不思議と怖くありません。
だって、お城の中は明るくてやわらかな光で満ちていたからです。
エミルはなにか不思議な力に導かれるようにお城の中を歩きました。

しばらくすると大きな扉がありました。
エミルがその扉を開けると、そこは図書室のようでした。
その図書室にある本はエミルが見たことのない文字で書かれています。
本は棚に収まっていたり、床に落ちて朽ち果てていたりしていました。

図書室の奥まで行くと、朽ち果てた棚の中段にきれいな箱が置いてありました。
周りの物はすべてぼろぼろなのに、その箱だけがまるで新品のように輝いているではありませんか。
エミルは不思議に思ってその箱を手に取りました。
箱には「Tresor」と刻まれていました。
鍵穴も継ぎ目もなく開きそうにないのに、ブロックではなく箱だと思えるのです。

エミルはその箱をもって城を出ました。
するとたちまち白い霧がエミルを包み込み、エミルは思わず目をつむりました。

目を開けるとそこは森の出口でした。
振り向いてみもお城は見当たりません。
まるで魔法みたいだと思ったエミルは、村で"魔女"と呼ばれているベアトリーチェというおばあさんを尋ねました。

ベアトリーチェはエミルの話を真剣に聞いてくれました。
そして不思議な箱を見ると、
「霧の島に願いを叶える世界樹がある。その世界樹を目指しなさい。いいかいエミル。その箱は決して手放してはいけないよ。人に見せびらかしてもいけない。袋に入れて、大事にしまって持っていきなさい。そして直感を信じて進むんだ。」
と言いました。

続く・・・


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