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NHK大河ドラマ「光る君へ」の放送の前に「あさきゆめみし」を読んでみた!

NHK大河ドラマ「光る君へ」の放送の前に「あさきゆめみし」を読んでみた!

 「あさきゆめみし」は大和和紀さんの漫画。源氏物語を漫画化し、原作の魅力を分かりやすく伝えたと言われています。1979年~1993年まで連載されたらしいです。全54帖の物語。作者は紫式部。高校の時に授業で「源氏物語」について少し学んで「六条の御息所」(ろくじょうのみやすどころ)とか、「女御」(にょうご)「更衣」(こうい)あまたさぶらひたまひける。という冒頭の文言を学んだ記憶があります。これって「大奥」と同じようなところなんやな!というようなことが今になるとわかって来るのですが、高校時代は何を言うてるんやろ????みたいな感じでした。
 
 しかし、大和和紀の「あさきゆめみし」が登場してから源氏物語がなじみやすいものになって行ったのではないでしょうか?多くの図書館などにも置かれるようにもなり、もちろん学校の図書室にもあるそうです。そうして「源氏物語」があまたの現代語訳以上に大衆化を果たしてくれました。(以下の角田光代さんの現代語訳版は読んでみたいですが…。)

今年、わけあって「源氏物語」を学ぶこととなり正月の時間に集中して「あさきゆめみし」を読み通しました。

 「光源氏」の幼少期から、40歳を過ぎて亡くなるまで、そして、その子息たちが宇治にいるお姫様を取り合うという「宇治十帖」からなる物語でした。中盤は漫画と言へどもテキストが多くて読むのに結構時間がかかりました。内省のシーンも多く、独白体で進んで行くというような構成はやはり1970年代から80年代の少女マンガが独自の進化を遂げて高度な芸術化していったから出来たことやと思います。その文脈の中で書かれた本作はある種「少女漫画」のある種の「文学作品化」に貢献して作品の一つではないでしょうか?
 光源氏の恋愛遍歴を書き連ねたもの、そこには近親相姦的な描写や不倫的な描写がたくさん登場します。今の時代にこうした自由な恋愛と言うのでしょうか?を黙認するという時代ではなくなって来ています。本作を現在の人が見ると勝手気ままな男衆に翻弄される女たちと見えてくるのだと思うのです!光源氏のすごいところはいくつかの場所で複数の女性と関係を持ちながらそれが持続していくというところ。ある種の博愛の人と言えるのかも知れません。


 「これって倫理的にどうなんや!」という声が今の時代なら当然上がってくるのかも知れませんが、あの時代にそういう原作だったから、というしかないのかも知れません。しかしながら、紫式部はその構造を借りて実は仏教的な思想の深みを描き、さらには、自らが得意とする和歌を組み合わせて高貴な気品のある作品へと昇華させていったのではないでしょうか?
と書いたのですが、本居宣長は以下のような解釈をされていたそうです。

本居宣長は『源氏物語玉の小櫛』 において、『源氏物語』を「外来の理論」である儒教や仏教に頼って解釈するべきではなく、『源氏物語』そのものから導き出されるべきであるとし、その成果として、「もののあはれ」論を主張した。(出典:阿部秋生「物のあはれの論」『源氏物語入門』岩波セミナーブックス41(岩波書店、1992年(平成4年)9月7日))

と。そういう意味では日本古来の文化自体が、そもそも、そうしたものを持っていたと考えるというのが自然なのかも知れません。とはいえ「因果応報」などの要素がこの物語の根幹を貫いているのは確かです!そういう意味ではもしかしたら宗教的な思想自体が人間の心の奥底にはあって、その感覚は普遍的なものであるのかも知れないな、と思わせてくれるのです!この感覚に関しては遠藤周作の「深い河」を読んだ時のレビューに記しましたので良かったら以下を参照ください。


 商業的な描写とも取られかれない「よろめきシーン」(今、この言葉を使っている人はいるのかな?)が一定の割合で挿入されるというお約束を維持しながらも

 紫式部は、「人は生まれながらに罪を背負って生きており、みんな悪人である、と。そんな人たちが生きているだけで「業」が生まれ、他の命を奪って行ってしまう。いま、は良くてもその先祖様、そして彼らの子孫たちにその因果は巡り巡るのですよ!」と言い続けているように思えてなりませんでした。

源氏物語はある種のエロ恋愛物語として見ることもできますが、もう一面では人間の「非業」を描いた物語です。一夫一妻制となったこの国では、もはや許されない不実の罪を行う人たちなのかも知れませんが、実は、そうした物語は何時の世にもあるのだな!ということが今も「源氏物語」あるいは「あさきゆめみし」がこうして読まれている理由なのでしょうか?

 2024年1月から始まる大河ドラマ「光る君へ」はどんな物語になるかわかりませんが、大石静というベテランの脚本家がガチンコで向き合ったものを見てみたいと思うのです!

 誰かのために良かれと思ってやったことが、他の誰かにとっては心が引き裂かれるような思いのことであったりするということが本作ではたくさん出て来ます。人間は身体を伴った生きものです!その生身の身体があるからこその「生」を真正面から描いた物語と言えるのかも知れません。誰かを愛することによって生まれて来る苦悩。まさにこの世の生きとし生けるものへの想いは、日本が古来から持っている、ある種の世界観に裏打ちされたものなのかもしれません。

 読了に20時間以上かかりました。

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