見出し画像

映画「駆け抜けたら、海。」(十川雅司:脚本・監督)(@UPLINK京都)を見て来ました。

 映画「駆け抜けたら、海。」(十川雅司:脚本・監督)(@UPLINK京都)を見て来ました。 

IPLINK配給で短編映画がまとめて上映された。「ミラーライアーフィルムズ」という題名で、今回シーズン5とある。ということは過去4回こうした特集上映が行われたことを知る。

京都のとても洒落た文化的な香りを感じる烏丸御池の地下鉄の駅の上にUPLINK京都はある。とても素敵な場所。少し歩くとあの俵屋旅館があるような場所。この辺りはインバウンドの観光客が少ない。


 短編映画が6本上映された。短編と言っても、すごいキャストや監督の作品があった。現在朝の連ドラ「虎と翼」の主演をしている伊藤沙莉、山田孝之、又吉直樹が出演しているものや、竹中直人が監督しているものもあった。
 私がこの上映会を観に行こうと思った最大の理由は最後に上映された作品「駆け抜けたら、海。」を視たかったから。脚本・監督をした十川雅司さんは、私が勤務していた東北新社「映像テクノアカデミア」のCMプランナーコースで学んでくれた方だった。先日、彼はカンヌ映画祭に、あの深田晃司監督の制作スタッフの一員として参加したらしい!十川さんは、もともと演劇に興味があったのは当時から聞いていた。その後、映画の世界に踏みこんで行かれ、助監督やTVCMの制作の仕事などをしながら自ら脚本を書き、本作を作り上げた。
 十数分の短編作品。出演者は松原怜香と嶺結の二人。銭湯の脱衣所が主な舞台。女子大生の二人が合コンに行ったのだが途中で抜け出して、二人で銭湯にやって来たという設定。どちらかの風呂が修理中でもうひとりがそれに付き合ったと言う設定。「みつき」は「うみ」に片思いをしているという設定。「うみ」は彼氏がいて、うまくいっていないことを「みつき」に語る。「みつき」は自らの想いを伝えられないまま「うみ」の話を聞いている。視線だけの演技でその想いが伝わってくる。「みつき」は常に「うみ」を見ている。「うみ」は天真爛漫に彼氏とのことを語り続ける。会話はあくまで自然、説明的なセリフは一切ない。
 そして、ある瞬間「みつき」が「うみ」に対する想いがあふれ出てしまう。二人だけしかいない銭湯の脱衣所で。その感情のリリカルな詩情を感じて胸がしくしくとなる。二人のダンスのシーンが圧巻。このシーンを見るだけで十川監督のセンスと才能を感じるのではないだろうか?「モテキ」や「不適切にもほどがある」そして海外では「ララランド」や「ダンサーインザダーク」などのダンスがある映画などをいくつか思い出した。ダンスの楽曲の切なさとともに「みつき」の「うみ」に対する決して届かないかもしれない「想い」が溢れるようなシーンだった。
 そして「うみ」は「みつき」を包摂する。その感覚が今の若者らしくてとてもいい!「包摂(インクルージョン)」をすることで救われる何かがある、そして人生は続く、ささやかだけど包摂されていることで小さな幸せを感じられる人生を二人は生きていくのかも知れない!

 そんな優しさと慈愛に満ちた短編映画。十川監督の人に対する感性の豊かさは多くの人の気持ちを動かしてくれるだろう!

 先日、新聞のコラムで読んだのだが海外では長編映画を撮る前にこうした短編をいくつか制作して、カンヌ映画祭などの賞に出品するらしい。そうして認められ、そこから長編映画を制作するというルートが出来ているらしい!日本もそうした土壌が生まれてくると、もっと優れた作家と作品が世に出ていきやすい環境が生まれてくるのかも知れないと思った。この特集上映はそうした思いもあってのことなのだろうか?6月中旬までの限定上映。詳しくはhttps://films.mirrorliar.com/

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?