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悪なき殺人

 元気がなく、心の底から映画が観たくなって、映画館に行ってきた。悪なき殺人。


 冬のフランスのとある地方で、女性が一人行方不明になった。女性の車を見かけた者、パリで出会っていた者、隠しごとをしているらしい者、大金を稼ぐ方法を模索する者。複数の、接点があったりなかったりする人物の人生が絡み合い、1つの事件へと収斂していく。
 脚本が巧みで、そことここが繋がるのか!と驚きながらのストーリー展開。確かに「悪なき殺人」かもしれないが、「悪意」はある。登場人物それぞれが誰かに向けた「悪意」が思わぬところで絡み合い、最悪の方向へ進んでいく。最後まで、全員が嫌な奴で後味が悪かった。気持ちにつけ入ろうとする者、弄ぶ者、利用する者…….。人間の悪意に焦点を置き、ここまで見事に極上のサスペンスに仕上げた脚本と監督、スタッフに脱帽です。

 そして、(言い方が難しいけれど)演じる俳優がいわゆる「美男美女」でないのも良いと思いました。日本の映画なら、もう少し華やかな演者が抜擢されそうで、どうしていつも「美男美女」ばかりなのだろうと思う。全員の演技(特にアリス)が見事でした。

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