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2022年7月#1『そしてミランダを殺す』

 『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン 訳:務台夏子 創元推理文庫

 タイトルは別にネタバレではない。でもこのnoteはネタバレかもしれないので、読んでいない人は読まない方がいいかも。

 誰がミランダを殺したか、というのはそんなに重要ではないのだと思う。最初の語り手、ミランダの夫のテッドがリリーという女性と出会ったところから、ミランダが死ぬことは決まっている。テッドはヒースロー空港でリリーと出会い、自分を裏切った妻への殺意を語る。テッドをけしかけるリリー。会話に妖艶な空気が漂い始め「不倫と殺人のドロドロした愛憎劇か?」と思ったところでリリーの過去へと飛んでしまう。このリリーが、自分を守るため次々と人を殺していく女性なのだ。サイコパスでもファムファタルでもない。ただ、「防衛本能」として淡々と殺人を犯す。頭も切れるし美人。リリーが捕まるのかどうかという緊張感や急展開もあるものの、犯人は分かり切っている。けれど読み始めたら止まらず一日で読み終えたのは、リリーが興味深いからかもしれない。
 『シンプル・フェイバー』『ガール・オン・ザ・トレイン』のように映像化されそうな小説で、リリー役は誰が良いかと考えていた。思いついたのが、ミア・ワシコウスカ。心の中で「変な映画担当」と呼んでいる。話題になったのが『アリス・イン・ワンダーランド』という大作だったのに、奇天烈な映画にばかり出ているのだ。『マップ・トゥ・ザ・スターズ』とか、『イノセント・ガーデン』とか。美人だけれどちょっと怖い。そしてリリーは『イノセント・ガーデン』の主人公によく似ていると思うのだ。繊細でミステリアス、殺人も厭わない。厭わないというより悪いと感じていない。それが何か?という顔をしている。リリーは『イノセント・ガーデン』のラストで「覚醒」する彼女じゃないだろうか。ミア・ワシコウスカ一択だと思う。

ミア・ワシコウスカの魅力が分かる2作

『イノセント・ガーデン』

『マップ・トゥ・ザ・スターズ』


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