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【あつ森ファンタジームービー】春はどこへ行った【原作版 第6章】

第6章 旅の終わり


僕は…トーカじゃなかったんだ…。

過去の記憶全てを思い出して、僕は頭が割れそうになっていた。

僕が…この世界を冬に閉じ込めた元凶だったなんて…。
旅で出会った人たちは皆、雪の中で懸命に暮らしていたのに…。

罪悪感に苦しむ僕を、冬の精は凍った瞳で見つめて言った。


「ずっと雪と踊っていたかったけれど、長い時が経って疲れてしまったわ。

そろそろ眠りにつきたいの。

あなたたちなら雪の魔法を溶かせるわ。」

冬の精霊の言葉に嫌な予感がした。

あなた「たち」…?

忘却の雪の魔法を一緒にかけた僕が呼ばれていたのは分かるけれど、トーコが呼ばれていたのはどうして…?

冬の精霊はトーコを見つめて言う。

「私は忘却の雪で世界から『春』を忘れさせた。

あなた本当はもう気付いているんでしょう?

それなのに、ここに来るまで随分遠回りをしてきたようじゃないの。」


「トーコ…?」

「思い出した…ううん、本当はいつからか分かっていたの。
わたしの本当の名前は『ハル』。
この世界の春を司る精霊。」


トーコは悲しそうな声で告げる。

雪の世界を初めて見るかのようにはしゃいでいたのも、彼女が本当に冬を知らなかったからなのだと、僕はやっと気がついた。

「トーカ、ずっとひとりぼっちで寂しかったあなたは、忘却魔法でまっさらになったハルに食べ物を与え、『トーコ』と名付けた。無意識のうちにこの子に魔法をかけていたのよ。


本来なら真冬に生きられないはずの春の精が、人間の『トーコ』であるかのように存在してしまった。

ハルが『トーコ』でいるために、あなたの魔力は少しずつ消費され、やがて底をつくでしょう。」

「そんな…!」

俯いていたトーコが、決心したようにまっすぐ僕を見つめた。

「煌めく冬の世界を、ずっとトーカと旅していたかった…。けれど……私の役目を果たさなくちゃ。


トーカ、私に力を貸して。一緒に雪の世界を溶かそう。」

「でも…!それじゃ君は…」

「トーカ、どんなことにもいつか終わりは来るから……怖がらないで。ここからもう一度はじめるんだよ。」


トーコは優しい表情で僕に手を伸ばす。

これまでのトーコとの旅の思い出が頭を巡った。ずっとずっと、君と一緒に居たかった。


でも、僕は…僕がはじめた永遠の冬の世界を、終わらせないと…。

僕はトーコの手を取ってありったけの魔力を振り絞った。

僕の火の魔法があたたかな光となって僕たちの足元から広がり、世界を包み込んでいった。

冬の精霊は満足そうな表情を浮かべると、光の中に溶けて消えていった。

世界に春が訪れた。

トーコは光の中でふんわりと優しい色の衣をまとって、陽射しのようにきらめいていた。

「ありがとう、トーカ。
トーカと…トーコでいられてよかった。
私のかわりに、これからたくさんの世界の姿を見てね。」


にっこりと笑って、
ハルの姿は世界に溶けて消えた。

涙が僕の頬を伝って、僕は全ての魔力を失った。

泣いたことなんて、トーカになってからも、スノウの記憶にもなかったのに…。
涙が溢れて止まらなかった。


けれど胸のなかは温かくて、
魔力を失った僕には、精霊の姿を見ることはもうできないけれど、トーコが側にいてくれるように感じた。


そして、それからの僕はーー。

第6章 旅の終わり おわり


読んでくださりありがとうございます🥰
原作者イラスト、冬の精霊です❄️

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❄️前回のおはなし


❄️共同制作 ゆりーなちゃん

❄️次回 最終章 春はどこへ行った
エピローグは続編に繋がる新規シーンを追加しています☺️🎉
6月11日(土)公開予定です!

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