見出し画像

MCU一気見の刑に処す⑧『アイアンマン3』感想 - ヤキニクからオトナになる

警告
本記事は映画『アイアンマン3』および
MCUシリーズのネタバレを含みます。




皆さんこんばんは。
MCUシリーズを『アベンジャーズ:エンドゲーム』まで初見で一気見するやつです。

今回は『アイアンマン3』。

突然ですが、私はここまで『アイアンマン』シリーズを合計3作観てきましたが、皆さんは一体どの作品が一番のお気に入りでしょうか?

私はこの『3』が『1』よりも好みで、もしかするとシリーズ中一番好きかもしれません。

その主な理由は2つです。
①「主人公スターク自身の成長、ヒーローとしての目覚め」という一貫したテーマが物語の全てのシーンに力強い説得力を与え、「ヒーローもの」として、より高いステージへゆくワクワクを視聴者に提供してくれるから。

② ①で示したようなテーマの完成を視聴者に示すシーン、すなわち「最後のお別れ」のくだりがあまりにもオシャレで美しいから。

『1』『2』も、映像作品として優れたものであることには間違いありませんが、ストーリーとしては、主人公スタークが自身の身に降りかかる生命の危機や私怨を跳ね除け、またその流れの中で会社や自身の身の回りの問題を解決していくことに終始しています。
また、『アベンジャーズ』に向けた伏線としてのシーンに比較的多く尺を割いているのも『2』においては顕著です。

今作は、まず『アベンジャーズ』の一連の事件を終えた後のスタークが、ヒーローとしてどれほど精神的に未熟であるかという事を示すシーンが続きます。

凄惨な戦いのトラウマ。
不眠でスーツ製作に没頭し、遠隔操作でいつでもスーツを呼び出す改良を加えるほどのスーツへの依存
家族や周辺住民を顧みず、敵の組織へ住所を晒して個人としての喧嘩を売る荒れよう。

そして今作の敵も、これまでの敵とはスケールが違います。
「テロ行為は復讐とは別物」と語るキリアンは、もはや私怨の域を超えた破壊行為を全米に拡大します。
こうした敵への対処はもはや私的な争いの範疇を超えており、ヒーローとして国民を守ることがスタークには要求されている、と視聴者に向けて示しているように思えます。

今作でスタークは友人を傷つけられ、自宅とスーツを粉々にされ、片田舎のいじめられっ子と助け合い、政治家たちとスカイダイビングして、ようやく「誰かの為に戦う心」に目覚めます。

そしてラストに、拉致監禁の上に魔改造されたペッパーを助けるための最終決戦を迎えるのですが、そこでの戦いっぷりが最高でした。

もはやスタークの相棒と言えるAIのジャーヴィスによって数十体のスーツがリモート操作され、その中でスタークは様々なスーツを脱いだり着たりしながらキリアンを追い詰めていくのです。

それは、スーツを自分の半身のように語ってきた今までのスタークの戦いとは全く異なります。
この戦いの最中、何度もスーツが敵の攻撃で真っ二つにされたり頭吹っ飛ばされて自爆する度に、私は「ヴッ!」ってなってました。

皆さんも初見ではそうだったのではないでしょうか?
そう、これが今作における「喪失と別れ」です。

テネシーのいじめられっ子ハーレーがトニー・スタークにはポテト銃を突きつけ、脱ぎ捨てられたスーツを見た瞬間に顔を輝かせたように、私たちは「パワード・スーツ(を着ているスターク)こそがアイアンマンである」と認知してきました。

そのスーツが、スタークの戦いにおいて道具として使役され、時には脱ぎ捨てられ、時には落下するスタークを受け止め、助けに来たと思えば躓いてバラバラになる。

そして遂に戦いに勝利したスタークとペッパーは互いを抱きしめ合い、スタークはクリスマス・イブの夜を彩る花火に見立てて全てのスーツを空中で爆破し、最後に「私がアイアンマンだ」と締めくくって映像が終わります。

え?

この脚本……

マジの天才かな?

そこには、取ってつけたようにラストで殺されるメインキャラクターも、いかにもそれで主人公が成長しましたよ〜みたいなお涙頂戴な演出も存在しません。

最高に華々しく洒脱で、無駄のない、かつ「スーツからの精神的な脱却を果たし、ヒーローとして目覚める」というテーマの完成を視聴者に伝える上で、本当に見事としか言いようのないラストシーンだったと思います。

そして、私は遂にヒーローとして歩み出したトニー・スタークの物語を、これまでのように「クレしん」「こち亀」「これヤキニクロードじゃん」と笑いながらコーラがぶ飲みして、作業ついでに流し見することはもう出来ないのかもしれません。

ヒーローとしての苦悩や葛藤をスタークと分かち合い、物語を真摯に読み解き思考しながら、作品に向かい合わなければ……

っていうのは冗談で、

次回のMCUシリーズも、モンスターエナジーバキバキにキメながら熱狂できるのを楽しみに観ていきます!


次回は『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』です。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?