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私はたぶん、カルピスの本当の美味しさをまだ知らない。

気温が一気に上がり、暑い日が続いている。こんな暑い日はコーヒーよりジュースだと、仕事から帰宅後、冷蔵庫へ直行し、家族の作った梅シロップをコップに入れて水を注いで氷を浮かべる。自家製梅ジュースだ。
数口ぐびぐびと飲んでみて、美味しいけど少し濃いなと思って、また水を足す。
もう一口。まだ濃い。何度か繰り返すうちに喉の渇きはおさまったが、まだ納得のいく濃度にならない。慎重だった手つきを思い切って、少し水を多めに入れてみて、……薄くしすぎたか?と首を傾げる。最初よりは美味しい、かもしれないが、さっきの方が一番美味しかった気がする。
かといって、喉はもう乾いていない。これ以上ジュースの量を増やしてもお腹が膨れてしまう。時刻は夕飯前。追加のシロップを足すことは避け、すっかりグラスいっぱいになったジュースを入れすぎたなぁと思いつつ、数口また飲み干す。

子供の頃から、私はこういったことを繰り返している。カルピスのような希釈して作る飲み物の絶妙な塩梅が、いまだに見極められないのだ。
過ぎたるは及ばざるが如し。薄すぎる味はガッカリするため、水を多く入れないようにだけは気をつけているが、本当に一番美味しい濃度というのを、毎回逃している気がする。

カルピスの場合は、公式が販売しているカルピスウォーターがおそらく万人が美味しいと思う濃度なのだろう。それ以外の希釈する飲料の多くには「おすすめ 水:原液 7:3の割合」などラベルに参考の数字が書いていたりする。
けれどもしかしたら、今現在のコンディションの自分が一番美味しいと思う濃度は、おすすめの濃度とは少しだけ違うかもしれない。
疲れた時は味が濃いものが欲しいし、逆にさっぱりしたものを好む時もある。

今作っているのも美味しいけれど、もっと美味しくなるかも、と。そのベストを見極めたくて、私は希釈系の飲み物を作る時、常に試し飲みをしながら自分の舌に問いかけている。

しかし毎回心から納得のいく出来にはならず、首を傾げつつも「まぁこれも美味しいからいいか」と妥協する結果となる。満足と言い切るにはいささか足りない感じだ。
次こそは、と思いつつ、やっぱりその次も
①少し濃いな②まだ濃いな③薄い…?の3ステップを繰り返している。②と③には大きな開きがあるようで、実はかなり狭いものだから「自分にとってちょうど良い濃度」を狙い撃ちするのがとても難しい。

だから多分、私はカルピスの本当の美味しさを、まだ知らないままだ。

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