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まさかの映像化・最遊記「六芒星館殺人事件」について勝手に解説する



1月よりスタートした、最遊記RELOAD ZEROIN。

原作未映像化だったヘイゼル編が実に忠実に作られていて、毎回放送が楽しみだ。

そして今回の5話目「帰ってきたアイツ」で、まさかの「六芒星館殺人事件」のエピソードまで映像化してくれて、びっくりしたと同時に原作ファンをとことん喜ばせてくれる丁寧な作りに感動している。
しかしアニメのみを追っている人、また原作を追っている人でもあまり知られていない情報が多分に含まれている話でもあるので、これを知っていたらさらに楽しめるだろう、もっと皆に楽しんで欲しい!!!という強い思いに駆られ、無粋ながら解説をしようと思いこの記事を書いた。


性質上、この記事は現在放送中のZEROIN本編・および原作最遊記の多大なるネタバレを含むため、ネタバレ上等の方だけお目を通されることを推奨したい。


なお筆者について簡単に述べると、最遊記で人生を狂わされた数多くの人間の一人である。
リアル中学2年の時に最遊記と出会い、そこから立派なオタクとして目覚めてしまった。
基本原作派だが、二次も嗜む。(何のことかわからない人はスルーしてください)
現在ZEROINで放送中のヘイゼル編は、連載当時ゼロサム本誌で読んでいた者である。何年前だ…?(と書きながら、考えることを途中でやめた)



さて、まずこの5話「帰ってきたアイツ」だが、アイツとは懐かしの敵キャラ・幻術使いの雀呂様のことだ。
彼はそもそも原作だとagainst the stream、通称大河編or白紅孩児編にて登場する牛魔王サイド側の妖怪なのだが、実は奇妙な登場遍歴がある。


原作では今回放送のZEROIN5話に該当するエピソードにて、妖怪サイドから裏切り者扱いされてしまい、ドラマCD「Party」の峰倉先生書き下ろしエピソードや、ゼロサムで発売された読み札カルタ付きドラマCDなどでは、愉快な仲間たちの一人として登場する、最遊記のセミレギュラーのような扱いのキャラだ。


しかし放送当時、原作に追いついたために、オリジナル展開になったGUNLOCKだと、原作と設定の違うヘイゼルと手を組んだのち、結局命を落としてしまう。
挙げ句の果てに死者として復活させられ、妖怪でありながら「殺せ、妖怪は殺せ…」と呟きながら悟空たちに襲いかかる、哀れな末路となっている。

ところがどっこい、数年前に放送したBLASTにおいて、彼はまさかの復活を遂げたのだ。
恒天城の周辺の村を襲う妖怪たちの迎撃に出た悟空。そこで雀呂はまさかの登場を果たし、悟空を幻術で惑わすというオリジナル展開があったのだ。
当時はまだヘイゼル編の再アニメ化の話は微塵もなかったため、一部考察界隈では「GUNLOCKとBLASTは完全に別時空」という説が濃厚になったりした。

今回のアニメは完全に「原作に忠実」を謳っているので、原作のエピソードのまま、もちろん悟空とは面識がない状態で遭遇する。
その状態で三蔵一行を狙っていることに気づかれないまま悟空と共闘して、打ち解けて、それが元で妖怪サイドから裏切り者扱いされる。原作通りの展開となった。


余談だが、連載当時ゼロサムから発売された誌上販売ドラマCDだと、悟浄の「劇団ひとりじゃん」というセリフにはピー音が混じっていた。
しかし今回のテレビ版では何の修正もされていない。深夜放送だから許してもらえたのだろうか…(笑)

原作者の峰倉先生曰く、「箸休め回」(ドラマCD版Even a worm vol.3の座談会での発言)のエピソードは、Aパートで終了。

残すBパートで、原作ファンも予想していなかったまさかの展開が始まる。


そう、それが件の「六芒星館殺人事件」である。原作8巻に収録された番外編が、まさかの映像化である。


ところでこの「六芒星館殺人事件」。原作8巻の巻末に唐突に収録されているのだが、そもそもは当時最遊記が連載していたゼロサムがコミケにて販売していた公式アンソロジー冊子「コゼロサム」が初出だ。
コゼロサムには当時の新人作家さんの読み切り作品のほか、当時の連載陣による豪華なパロディ漫画などが載っていた。

それでテーマ「もしも〇〇だったら」というお題で、「もしも三蔵が探偵だったら」というテーマで峰倉先生が書かれたのが、この「六芒星館殺人事件」である。

(超余談だが、私が当時好きだったのはストプラの美川べるの先生とバンパイアドール・ギルナザンの雁えりか先生のシャッフル漫画である。両先生の公私の付き合いがあるために成立したクロスオーバーは最高だった。正宗と巧美の「もっと萌え美少女にふさわしいお菓子を〜」「なんでお前がそこまで必死なんだ」というやりとりが面白かった)


このパロディに関しての設定は、まさかの御本家で紹介されているのでリンクを載せておく。


峰倉先生の脳内ではいろんな物語が展開しているのだろうな。この設定での話ももっと読んでみたい。

それでは、アニメ本編の解説にいこうと思う。
まず八戒達の大学名。これは峰倉先生の代表作「私立荒磯高等学校生徒会執行部」から来ている。「荒磯高校、大学あったんだ…」というのが当時の多くの原作ファンの感想である。


その2。ゴーダイ・グロース。この人は原作3巻・OVA「埋葬編」で登場する、先代無天経文の所持者・剛内三蔵法師である。(死ぬほどどうでもいいことだが、この人の若い頃のあだ名の「モモちゃん」が、別ジャンルの推しキャラと同じ呼び名でちょっぴり複雑な気分になる私である)


皆様ご存知なように、彼はヘイゼルとは全く血縁関係も縁もゆかりもない。このパロディだけの当て役である。しかし久々の登場でこれである。

(…書いていてふと思ったが、烏哭とのつながりから考えると、彼を殺したのはやっぱり你かもしれない)


そしてまさかの紅孩児御一行の登場だが、これも原作(番外編だけど)通り。
このパロディでは「グロース家に一族を滅ぼされた」という。この王子様はどこでも何だか不幸体質である。
料理人・独角兕の「紅…」という、たった一言のセリフも原作通り。
メイドの八百鼠ちゃんの皆口さんは、GUNLOCKから実に17年ぶりの登場だが、まさかこんな形の登場になるとは思いもしなかっただろう。
でも皆さん出てくださってありがとう…。

お抱え医師という設定の你博士と、マダム玉面が深い仲というのも原作通り。

このイメージシーンは1巻のsnow dropの冒頭のオマージュである。最遊記本編でも牛魔王という旦那を復活させようとしながら、玉面公主は你博士と肉体関係にある。ただ峰倉先生曰く、愛情はないとのこと。(出典・原作公式ガイドブック「最遊人」)


捜査している面々の中、悟浄だけが腰が引けて…ビビっているが、これはちょこっとオリジナル描写。といっても、これにはちゃんと理由がある。

三蔵一行の四人で、ほかの面々が普通に霊感がある中、悟浄だけが霊感がゼロなのである。この描写は公式媒体の中でも番外編に多い。

初出は確か、みさぎ聖先生によるエニックス時代に出版された小説版最遊記3巻「螺旋の暦」。

この話で、悟浄は幼女の幽霊に取り憑かれてしまう。(余談だが、ドラマCD版だと飯塚雅弓さんの声で可愛い)

またゼロサムになってからの公式ノベル「最遊記OMNIBUS」において、峰倉先生が自ら執筆された「驟雨の森」においても、悟浄が霊感ゼロなのは明記されている。


そのほかにも、確かドラマCDのおまけエピソードなどで、ちょこちょこそれっぽい描写があった気がする。あと期間限定で解説されていたTwitterの公式アカウントでも、悟浄だけ見えてないというネタがあった。


四人の霊感については、峰倉先生の画業二十周年記念サイトのQ&Aで詳しく述べられていたのだが、現在そのページがちょっと見つけられない。

たしか
「三蔵には幼少期から普通の人間と同じように霊が見えており、悟空には野生の霊感が、八戒にも当たり前のように霊感が、悟浄にだけ何もありません(笑)」と言った感じで述べられていたと記憶している。

そんなわけで、この「六芒星屋形殺人事件」も、基本原作通りである。
呪いの経文になぞらえて次々に犠牲者が出る中、悟浄が真相に近づいたところで、後ろに立つ何者かの影が映る。
原作ではそこでコマが変わり、誰かの「そうだ!全部オレがやったんだ!」という台詞の後に三蔵様の「めんどくせぇ。ホシは貴様だろうが」という決め台詞が入り、「※本気にしないでね」というあおり文とともに終了する。

アニメだと、その後花瓶を落とされて悟浄がまさかの死亡を遂げる。ここから八百鼠ちゃん、独角兕が次々に殺され、殺された皆がゾンビ化して襲いかかってくるというのは、完全なるアニメオリジナル展開である。

紅孩児が「オレがやったんだ!」と告白するのもオリジナル。(まぁ、あの状況下の残った面々の中で、一人称があの台詞に該当するのは彼だけだが)


いやはや、悟浄が血まみれになった時は正直驚いた。そして四人の中でギャグ時空とはいえ、ゾンビ化しても許されるのはおそらく悟浄だけなので、いい人選だなと感じた。

なお映画予告前の上映注意に関しては、完全にアニメオリジナル。
ちなみに原作ファンには周知の事実だが、白竜は原作だとジープという名前(車種から八戒がそのまま名付けた・小説版2巻「鏡花水月」より)だが、商標に引っ掛かるためアニメ版だと白竜と呼ばれている。音声ドラマだと原作通り。

そんなわけで、豆知識というか、本筋から脱線しまくりのただ最遊記のマニアックな部分を語りたいだけの記事になってしまったが、少しでも「へぇ」と思っていただけたら、書き手としては本望である。


さて、次回は嵐の前の静けさ。「蟹は----タラバや」の回だ。

そうしてもうすぐいよいよ、あのエピソードである。

私としては、早く三蔵様の町内マラソンを映像で拝みたいところである。



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