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#142 あとひとつ


ただガムシャラにやり続けたら
いつの間にか最後を迎えてる。

その時には、体力も底をついて
あとは、気力だけでたっているかも。


周りも同じかもしれない。


肩を揺らし、息遣いは荒く
手は膝について震えを必死に抑える。


汗が流れる。輪郭に沿ってゆっくりと


筋肉はどんどん脱力していく。

次第に滴っていた汗は溢れ出るのを辞め
名残りで表面を濡らすだけで徐々に乾いていく


ガス欠と呼ばれるものだ。


自分では気づかない。
正確には気づきたくないんだろう。

炎天下の中でのあの小さな丘の上は
周りよりも2〜3℃気温が高い。
それがそこに立つ者の使命でもある。

覚悟を決めて立っているからこそ
安易に譲りたくはない。
できるなら、最後まで立っていたい。


力尽きるその時まで。


あの日もそうだった。


試合の始まりは、いつも僕から。
正直に言う油断していた。

前に戦った時に完封に抑えた相手。


それまでも何度か戦っているが負け知らず


それだから、慢心があった。


前と違うことは、相手の監督。

その監督は、以前まで
その年の優勝候補のチームの監督だった。
僕達も何度も接戦を繰り広げた。
要は、僕の長所も短所も分かり尽している。


その入れ知恵が確実に入っていた。


いつもなら簡単に通る球が通らない。
空振りして僕を楽にしてくれるのに
その日は全くと言って反応してくれない。


この日は、全て研ぎ澄まさしたように
なにかに狙いを定めている。


直球だろう。
変化球でカウントを取ろう。
読みが甘かったのは僕の方だ、

それを狙っていた。
良くも悪くも僕の変化は精度が高い。
どの高さでも変化量に変わりがない。

ひたすらイメージを固めたであろう
相手の振ったバットに当たる。
軟式なんてものは詰まるなんて関係がない
そんな時がある。その頃は、ビヨンド全盛期。
根元から先まで真芯なんて言う投手泣かせのバットだ。案の定、この時もその根元に当たる。
木製なら折れているであろうポイントで
捉えた打球は、すごい速度で弾き返される。



久しぶりのヒットだった。
僕は動揺を隠せない。味方も同じだった。
あまりなかったエラーが出る。
重なって3点を先制される。


何とか初回を切り抜け、回を重ねたが
僕は脱水症状を起こしていた。



そして、初めの文章通りの状態。



審判からタイムをかけられ。
駆け寄ってくる。何のことか分からない。
ただ監督に向かってクルクルと指を回す。
そしたら、監督が交代を告げにベンチから出てくる。僕は、拒んだ。変われば終わると思った。



身の危険を鑑みて、交代になった。
センターで、試合を見つめる。
お前は見とけと言わんばかりに
僕のところにボールは飛んでこない。


最終回。僕たちの攻撃。
先頭は9番からの好打順。
2死としながらも1点を返し
尚、ランナーは1塁。
僕の番が回ってくる。

結果は、センター前ヒット。


ランナー1、3塁とする。


バッターは4番。

僕が帰れば、同点。





しかし、そのまま試合は終わった。


これが、中学野球の終わりだった。




以上、それでは👋

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