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節目

春から晴れて社会人になり、長きに渡る学生生活が終わりを迎えた。人生の中でも比較的大きな節目であることから、いったいどれほどの変化が訪れるのか、また自分はそれに順応していけるのだろうかと不安に思う日々が続いていたが、いざ始まってみると以前との間にそれほど大きな「区切り」のようなものはなかったように感じる。もちろん、環境そのものは激変しているわけなので、これは心的な部分の話になってくるのだが、ふと思えば今までにも似たようなことを何度か経験しているような気がする。例えば、小学生の頃は中学生が雲の上のような存在に見えたし、高校生の頃は大学生が途方もなく難しいことをやっている超人に思えたりしたものだ。自分がそんなふうになれるなんてにわかには信じ難かったし、そこに辿り着くまでの道筋についても皆目見当がつかなかった。ところが、一旦階段を上がってしまえば、振り返って見て何か特筆して凄いことをやり遂げたとは決して思えず、むしろなんであんなに不安でいっぱいだったんだろうと考えたりもしてしまう。人間の適応システムというものは非常によくできていて、過度なストレスがかからないよう環境の変化にできるだけスムーズに順応していくことが可能になっているようだ。そう考えると、そもそも節目なんてものは本来存在し得ないものなのかもしれない。でも、それを意図的に作り出したくなってしまうのもまた人間の一部なわけなので、我々が理解している「節目」というものは、両者がせめぎ合うなかで生まれた絶妙な匙加減の産物なのかもしれない。

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