映画『ダンシング・ベートーヴェン』

2016製作/83分/スイス・スペイン合作

「ベートーヴェンは第九を作曲した当時、すでに聴力を失っていた」
「ベジャールの第九は音楽を見るための試みといえるのでは」

第九、歓喜の歌

今年はベートーヴェン生誕250の年。
第九のバレエがあるとは、この映画で初めて知った。

先に音としてよく耳にしている楽曲。
その音のひとつひとつが、ダンサーによって視覚化されていく。
「音楽を見る」という表現がしっくりする。

特にソリストさんたちが美しい。その体も、動きも、表情も。

音だけで楽しむよりも、視覚がプラスされることで、より心が動く。
大貫真幹さんが「踊ることが喜び」と表現していたけど、
自分にとっては「観ること聞くこと知ることが喜び」

この映画は舞台裏を描いていて、
作品のすべてを見ることはできないのだけど、
作品そのものや、作品に関わる人の思いを知ることができて、興味深かった。

以下は、心に残った言葉の数々。

「ダンスに差別はない。手をつないだ先が黒でも緑でも関係ない。世界が狭くなる中で、皆がSNSで自分はこうだああだと言っている。だが我々は皆取るに足らない人間だ。己と闘いながら生きているだけのね。」

「団員は一人一人違うし個性を持っている。多様性が豊かさを生むの。」

「間違いなくベートーヴェンの時代から人類は皆兄弟だ。
人類皆兄弟。全世界に向けた理想の表明だ。
第九が教えているのはこの理想を共有する感覚だよ。みなで一緒にね。」

「ここでは互いに争うのではなく共同作業をしている。」

「神と悪魔の王国は別々にあるとアンリ・ド・ローザンヌは言った。
私は同じ場所にあると思う。私たちの手の中に。
殺戮にも創造にも使える手。
たとえ世界を救えなくとも美は人に必要なもの。
私たちの夢と才能と献身の結晶である芸術作品は、人の心を励まし慰める。
大聖堂や灯台のようにそびえ立ち、哀れな人類の明るい希望の道しるべとなる。ベジャールは言った”希望は常に勝利である”」


特にここ。

たとえ世界を救えなくとも美は人に必要なもの。
芸術作品は、人の心を励まし慰める。
希望の道しるべとなる。
”希望は常に勝利である”

希望があるからこそ、生きていける。
希望は常に勝利。

自分にとっては、とても心に残る言葉でした。

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