『鴛鴦歌合戦』『GRAND MIRAGE!』の感想2

東京公演やっと見れました。お芝居もショーもすごく楽しかったです。
 
1.『鴛鴦歌合戦』
 もうほんと、このお芝居に出てくる人、みんな大好きです。思い切りがいいし、やりたい放題だし、お人好しだし。世の中、みんなこんな感じだったらいいのに。ちょっとモルカーを見たときの気分になりました。
 
 そして、そんな元気いっぱいのみんなを、礼三郎さんが楽しそうに見守ったりからかったりしているのがすごくかっこよくて……、夏祭りや剣の稽古やお誕生日会に連れていかれる場面がすごく好きです。15日に見たときは、お誕生日会からの二回目の逃走が花道へのダッシュで成功してしまい(?)、とことこ歩いていってしまう先生を大あわてで連れ戻してるのがすごく可愛かったです。柚香さんが見守るなか、みんなが伸び伸びとしている花咲藩は、今の花組そのものなのかな、と思いました。

 一番好きなのは相合傘の場面と、そのまえの、二人で雨宿りしている場面です。お春ちゃんが落ち込んでいる理由を話す気になったときの、礼三郎さんの笑顔。それから、「話してごらん?」というようにさらに微笑みかけるところが、最高に優しくて好きです。
 
 清貧を美徳としているのに、新しい着物が買えないというお春ちゃんの悩みにはすごく心を痛めてるところも好きだし、「親をバカなんて言っちゃあいけないよ」が笑いながら言うようになったのも好きです。19日に見たときは、そのあとの礼三郎さんの言葉一つ一つが、いつも以上にさっくり胸に入ってきて、この人がこんなふうに自分のことを話す相手はお春ちゃんだけなんだな、とすごく思いました。あと、最初のほうの「ありゃあいい人だからねえ」の言い方もかっこよかった。日本物の台詞回し、本当に好きです。
 
 最後、お春ちゃんが壺を割ったときの、礼三郎さんの「なんてことを……」って言い出しそうな顔も印象的でした。たしかに礼三郎さんは、お春ちゃんにおなかいっぱいお米を食べてほしいし、新しい着物も買ってほしい、と思ってるはず。それを見ていたら、礼三郎さんはお父さんに殉じるために、なにも持たずなにも欲しない孤独な生き方をしようとしていたのかな、としみじみ思って胸が痛くなりました。お春ちゃんが壺を割ってくれて本当によかった。
 たくさん笑えて、ときめきもいっぱいで、最後にほろりとさせてくれるこのお話、大好きです。
   
2.『GRAND MIRAGE!』
 場面ごとにぜんぜん違う世界観が広がるのがすごくて、いつも一瞬で終わってしまう感じです。
 以下、特に好きな場面の感想なのですが、基本全部の場面が好きなせいか、ぜんぜん書き終わらなかったので、柚香さんとまどかちゃんのデュエットダンスにしぼって書きました。

プロローグ
 出だしの娘役さんたちのコーラスがすごく綺麗。ふんわりした衣装をふんわりなびかせる柚香さんの夢の中の王子様感。デュエットダンスもロマンチックで、いつも以上にふんわり抱き上げられるまどかちゃんが、ぜんぜん体重がなさそうに見えます。そのあとの男役さんだけのタンゴで、衣装をふわっとさせたまま、きりっとかっこよくなるのもすごく好き。

砂漠
 最初の歌が大好きです。もともと好きな曲だし、ゆったり響く柚香さんの声がすごく綺麗で、一気にさまよえる湖のお話に引き込まれます。
 演じようによっては、ミラージュの乙女がフィリップ中尉を破滅に誘う物語にもなりそうなのに(GRAPH10月号の最後でちょっとやってました? すっごく可愛かったです)、そういう空気が一切なくて、出会ったばかりの二人が深く惹かれ合っている感じが神秘的で好きです。柚香さんがまどかちゃんのスカートを広げている時間がいつのまにかすごく長くなっていて、本当に綺麗でした。
 いつもより中性的でますます美しい柚香さんが切なそうに手を伸ばすところや、ひたすら優しく柚香さんを見つめるまどかちゃんが引き離されるときにとても悲しそうな顔をするところで、人間と楽園の関係ってこんな感じなのかな、と思ったりしました。
 砂嵐の精さんたちの大掛かりなアクションも迫力がありました。『鴛鴦歌合戦』の立ち回りにも感じたのですが、大人数が息の合った難しい動きをしてるの、すごくかっこいいです。
 
シボネー
 この場面、隅から隅まで大好きなんですが、不敵な笑顔で見つめ合う二人が特に好きです。乱暴にも見える強めの動作が、情熱的に愛し合う二人の愛の戯れに見えて、最高に素敵です。柚香さんが片足を振り上げるとき、一瞬しかしゃがまない挑戦的なまどかちゃんと、そんなまどかちゃんを手加減なしの好戦的な笑顔で見つめる柚香さん。でも、優しく触れるときは、ものすごく優しいんですよね。抱き合ってから、伸ばしていた両手をまどかちゃんの背中と後頭部にそっと添えて抱きしめるところとか、片方の手のひらを合わせるところとか、ものすごく愛情にあふれてて、すごく好きです。
 
 15日は舞台の端っこから中央に二人で戻っていくときに、柚香さんが「そこに知ってる人が来てるよ」って感じで指した場所がいつもよりだいぶ後ろで、まどかちゃんが不思議そうに手を振ったあと、はにゃ?って顔で柚香さんを見上げたのが大変可愛くて、そんなまどかちゃんに柚香さんが返した笑顔が、最高に最高に優しくてかっこよかったです。カフェブレイクで囲み取材のようすを見たときも思ったのですが、まどかちゃんをちょっと困らせて最高に可愛い表情を引き出したときの柚香さんの会心の笑みがとても好きです。
 
夜の街
 新聞の写真で、はじめてこの場面の衣装を見たとき、左足だけ黄色い別素材で変わっているな、と思ったのですが、実際に踊っているところを見たら、すさまじくかっこよくて、納得しました。軸にしている左足だけ動かさないで他は激しく動くときとか、左足だけ向きを変えるときとか、とにかく柚香さんのダンスが映えて、最高でした。
 柚香さんを見ていると、「人間の体ってこんな細かなパーツごとに動きや向きをコントロールできるものなの?」とか、「激しく動いているのに、その勢いに体が流れないでいつもきれい」とか、「こんなに音楽に合わせられるのって、すべての動きを制御できているからだよね」とか、「姿勢も動きもすごく正確できれいなのに、躍動感もすごいのはなぜ?」とか、「洗練された美しい動きって、見てると脳内快楽物質が放出される」とか、いろんな驚きがいっぱいで、本当にすごいです。
 
ボレロ
 柚香さんのまとっている空気や歌声が、力強く荘厳で、圧倒的に身分の高い絶対的強者が、情熱的に恋人を愛しているように見えます。それに対するまどかちゃんも、運命につかまってしまったような、愛に身を捧げる覚悟をしている女性に見えます。なんとなくだけど、心に闇を抱えていないルドルフとマリーに見えました。途中、死を想起させるように音楽が止まるのですが、そこを乗り越え、音楽が明るくなって、力強く生きていく感じで終わるのがすごく好き。最後の、大きく反っているまどかちゃんを抱き起こす手の力強さと優しさも好きだし、一番最後の表情もすごく好きです。
 今回のショーで、いろんな関係性の二人になる柚香さんとまどかちゃんを見たけど、ボレロのこの二人が、一番衝撃的でした。セリフも説明もなしで、こんなに物語が伝わってくるの、本当にすごいです。

フィナーレ
 色濃い二人をたくさん見た最後に、真っ白な衣装の幸せそうな二人が見れて、すごく癒されます。柚香さんは引き続き王子様っぽいけど、ボレロよりずっと軽やかで楽しそうで幸せそうで……。二人で同じ方向を向いて、同じ動きをしていて、なんだか、いろんなことを二人で乗り越えて生きていくって感じで、お芝居のときより鴛鴦夫婦に見えました(礼三郎さんとお春ちゃんは鴛鴦夫婦一歩手前だったので)。ほんと好きです。

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