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ピティナ特級公式レポート15〜サントリーホールを彩ったファイナリストたち

二次予選から聴いてきた特級も無事にファイナルを迎え、4名のファイナリストの煌めきに満ちた演奏がサントリーホールを彩りました。
本当に素晴らしい演奏ばかりで、未だに余韻に浸っています。

ファイナリストと共演したのは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の皆さま。指揮は飯森範親先生です。前日リハーサル、そして本番前のリハーサルも見学させていただきましたが、飯森先生も、東京シティ・フィルの皆さまも、ソリストが表現したいことをオーケストラ全体で調和できるよう、ソリスト一人一人に寄り添っているようでした。本当に素敵なオーケストラ。

当日リハーサルの様子


さて、トップバッターを飾ったのは、森永冬香さん。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏されました。

森永さんの演奏は、全体的にゴージャスでありながら音楽の表情をよく掴み、時にオケに乗って、オケを引っ張って、音楽を進めていきます。二次予選からずっと見てきた森永さんがこうしてコンチェルトと壮大な音楽を作り上げていることにしみじみと感動していると、力を入れていないと涙腺が緩みそうに。
そんな私とは打って変わって、客席からでもしっかりわかる、ハッピーオーラ全開の笑顔でピアノに向かう森永さん。前日のリハーサルでも「オーケストラと合わせてみて幸せだった」と語ってくれましたが、本番でもオーケストラと演奏できている幸せが音に乗り、その幸せ満載の粒立ちの良い音がオケと融合して、ホールは幸せオーラに包まれました。

森永さん、すごく赤が似合うなぁと思っていたのですが、思えば二次予選から赤いドレスで演奏されていました。


続く神宮司悠翔さんも、森永さんと同じく選曲はチャイコフスキーの協奏曲第1番。どっしりと入ったオーケストラに、神宮司さんの壮大で瑞々しい和音が響きます。

神宮司さんのピアノは陽に反射して煌く水面のように繊細で、本当に美しい。そして不意の甘い音色にもうっとりさせられます。なんとも絶妙な音の戯れ……。神宮司さんは音楽と一体化しているのでは、と思うほどです。どの瞬間を切り取っても「神宮司悠翔」という人物が作っている音楽だと確信が持てるチャイコフスキーで、実に豊かで壮大だった1楽章も、明るく繊細に響いた2楽章も、大胆に駆け抜けた3楽章も、きっとこの先忘れることはないでしょう。

神宮司さんは今大会最年少の17歳。前へ前へと進んでいく才能溢れる神宮司さんのピアノを、オーケストラが支え、後押ししているように聴こえました。これから彼が活躍していく未来が、とても楽しみです。

そして三番手は北村明日人さん——については、別で記事を書いています。
北村さんの演奏についてはこちらから↓


ファイナルのトリを飾ったのは、鶴原壮一郎さんです。ラヴェルのピアノ協奏曲を演奏された鶴原さん。

鶴原さんのコンチェルトは、とにかく色彩豊かでした。
前日リハーサルの際に注目して聴いてもらいたいと語ってくださった2楽章では、そのゆったりとした三拍子の音楽に、様々な思いを馳せた方も多いのではないでしょうか。何かが終わってしまう寂しさと喪失感に駆られ、けれども鶴原さんとオーケストラが作り上げる音楽は、それらを全て癒してくれました。そして3楽章に入ると、様々な音が交差し、鶴原さんのピアノを彩ります。疾走感に溢れ、音楽も聴衆も高揚し、その高揚と共に音楽が終わりました。

演奏後は万雷の拍手に包まれました。

全員の演奏が終わってリラックスしているファイナリストの皆さま。
素敵な時間を本当にありがとうございました!

(写真提供:ピティナ/カメラマン:石田宗一郎・永田大祐)



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