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文章の書き方 落語方式

落語方式は講談形式に比べセリフでの掛け合いで話が進みます。
なので書いていく際は場面を想像しながら、まずはその場いる人物たちの会話をひたすら書き起こします。
その後、誰がどのセリフ言ったのかが分かりやすくなるようにしたり、登場人物がなんかしらの動作を取ったのであればそれを追記し、体裁を整えていきます。
子の進め方の場合一番のネックとなる点は『誰がどのセリフを言ったのか』になります。
同じ様な口調の人物同士の会話だとセリフだけが続いた際に読者側は「あれこれどっちのセリフだ?」とならないよう配慮していく必要があります。
それぞれの目的・意思をセリフ内で分かるよう明確にしたり、特徴的な口調を付けてあげたりなどで際立たせてあげると良いかと思います。

例 落語方式

冬の時期のいつも通りの朝、いつも通りの食卓。
焼きたてのパンに手を伸ばす息子と娘、俺も自席に座りいつもの定位置に置いてある新聞に手を伸ばす。
流しで洗い物をしていた妻はキュッと音を立て蛇口を止めると、座っていた俺の方へと近づき真顔で言葉を繋いだ。
朝食にバターを塗ったトーストをかじりながら新聞と洒落こんでいた俺には重い妻からの一言であった。
「あなた、私に隠してることありますよね?」
「え?隠してること?え?」
正直言えばある。
長年生きてるんだから一個や二個や百個や千個くらいある。
春夏秋と一年のうち75%も単身赴任に行ってる妻だし、隠し事も年々積み重なって増えていってるし。
「とぼけても無駄です。私は見てたんですからね」
ニコニコ顔でほほ笑む我が妻ペルセポネ。
背中に嫌な汗を感じる。
「そのセリフで笑顔は怖いな。急にどうした。」
精一杯の強がりをしつつ、必死に脳内の検索エンジンをフル回転させる。
だめだ。検索結果が多すぎてどれがクリティカルなやつかわからん。
「しらばっくれるおつもりですか?」
「え、いや、違うって。あれはゼウスのバカが」
イチかバチかワンチャン狙いで言ってみる。
こういうとき悪いのは大体愚弟だろうし。
「ゼウスお父様が?」
「そうそう単細胞のゼウスのバカが、アスクレピオス急に殺しただけで」
「えっ?」
「あれっ?これじゃない?」
しまった。違う検索結果だった。と後悔するも既に時遅く、妻は顎に手を当て最近の膨大な死者数の処理に追われていることを思い出している。
「それで最近急に死者が増えて残業まみれになったのね・・・」
「言わんでいい話してしまった」
はぁと小さくため息をつき妻のお顔を伺う。
「その話はいいです。ではなく他にもあるでしょ?」
やっぱり終わりじゃないか。ですよねーと思い、また脳内の妻を怒らせたであろう話を思い出す。
「えーっと、あれか蘇生したら左肩だけ無かった少年な。あれ象牙で何とかしたから」
ゼウスのバカの話が続くけど、これだ。きっと。
「えっ?こわい話」
「あれっ?これでもない?あれかゼウスのバカが孫娘と電撃プレイしたやつ?」
「えっ?お父様やば・・・」
「あれっ?また違った?じゃああれだ、お前のことナンパしにきたやつなら、座ったら全て忘れる椅子。あれに座らせといたから。」
「なにそのやばい椅子」
「なんか作ってくれた。甥っ子のヘパイストスが・・・」
「でもそれでもなくて」
たくさん挙げたけどどれでもない。もうだめだお手上げっとしたいところだが、妻とのコミュニケーションは単身赴任から帰ってくる冬の間だけだし、なるたけ解決したい。
「えーっとじゃあどれだ」
と腕を組んで悩みこんだ俺を見てとうとう妻が言い放った。
「もう、あなたが川で若い子に見惚れてたやつです!」
川・・・?川なんか行ったっけ?あー昨日息子のザグと川遊びした時の・・・。
「あーあれか!いや違う。違うんだよ。そういうあれじゃなくてだな」
見惚れてたかどうかは正直覚えてないが、なんとかして誤解を解かねばと言葉を必死に出そうと奮闘する。
あれ?妻ちゃん笑ってる。慌てふためく俺の姿がそんなに可笑しかったのだろうか・・・?
「フフフ、もういいのよ。色々聞けたし。怒ってないですよ」
「あーそうなの!?なんだよかったー」
ほっと胸を撫で下ろす。安心したら喉も乾いたし空腹も感じる。
そういえば食事も途中だった、かじりかけのトーストを再び手に持ち耳の尖ったところからかじりつく。
そんな俺の様子をニコニコしながら妻は見つめる。
妻は再び食器の洗い物の続きをすると背を向けたまま俺にこう告げた。
「ただ私の夫に色目使ってた子は雑草に変えといたから☆」
そう言うと少しだけ振り返り流し見るように視線を俺に向ける。
「あとであなたも見つけたら踏みつぶしといてね☆」
「うちの嫁がメンヘラちゃんだった件」


フレデリック・レイトン 『ペルセポネ』
冬が終わると地上に帰るペルセポネさん。
春になると芽が生える植物を表してるのかも。

あとがき

今回はハデス唯一の浮気話をホラー落ちにしました。
まずハデスとペルセポネのセリフをひたすら書き起こし、状況埋めやハデスの焦りなどの心理面を書くために追記って感じです。
この書き方であれば状況進行を先に書けるので、プロットから書き起こす際にスムーズにいけるのではないでしょうか。

次回は漫才方式を書こうと思ったんですが、落語方式書いてたら「あれこれほぼ漫才と同じやん」となってしまったのでパスしますw
文章の書き方については、私程度でもまだまだ書けることがあるのでいずれ紹介できたらと思います。
というか今回ギリシャ神話書いてたらまた神話書きたくなったので、そっち先かも?

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