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ギリシャ神話の話3 ギガントマキア6

運命の三女神を探して

一方ガイアとテュポーンはゼウスとの戦いの傷をいやしていた。
もっと簡単に勝利を奪えると思っていた二柱だったが、予想以上の抵抗を見せたオリュンポス勢を警戒していた。
「ゼウスは封印することができたが、まだオリュンポスの神は残っている。勝利を盤石なものにしなくては」
ガイアはそう呟くと口元を歪ませ「そうだ」と呟く。
「テュポーンよモイラたち運命の三女神のもとへ向かうぞ」
ガイアはテュポーンを引き連れてオリュンポス山へと向かった。

ヘルメスの作戦

「親父、回復したからってホントに勝てるのかよ」
ヘルメスがそうゼウスに向かって聞くとゼウスは腕を組み顔をしかめた。
「正直・・・五分五分か」
まともにぶつかり合えば勝敗は分からない、その正直な意見にヘルメスは溜息を吐いた。
「あのバケモンとやるにはなぁ・・・お、テュポーンが動いたぜ親父」
「どこへ向かっている?」
「この方向は・・・オリュンポスだ!やつらもしかして”希望の果実”を奪う気じゃ・・・!?」
───希望の果実それは一口食べれば食べたものの望みをなんでも叶えると言われるオリュンポスの宝の一つであった。
「それはまずい、やつらより先にオリュンポスへ向かうぞ!」
と飛び立とうとしたゼウスをヘルメスが肩をつかみ引き留める。
「いや親父、良い手を思いついた。ここは俺に任せて親父はあとからのんびり来てくれ」
そう言うとヘルメスは颯爽と飛び立った。
良い手とは一体、頭を悩ませながらもゼウスはヘルメスを信じオリュンポスへ向かっていった。

オリュンポスの地にて


ジョン・メルフイシュ・ストラドウィック(1885) 運命の三女神
運命の糸を紡ぐ三姉妹

「ここにモイラ三姉妹が戻っていることは分かっている!素直に出せば手荒な真似はしないと約束をしよう」
オリュンポス神殿に着いたガイアとテュポーンは神殿に残っていた神たちを脅していた。
始原の神の一族でゼウスの祖母たるガイアの意力と、山をも越える巨大なテュポーンの姿に気圧され、抵抗する意思も見せず運命の三女神であるモイラ三姉妹が呼び出された。
「「「何用ですか?叔母上と巨兵よ」」」
虚勢を張るかのように大声で返すモイラ三女神を見てコロコロとガイアは笑った。
「テュポーンの威光を浴び逃げ帰った割にまだ威勢をはるではないか」
三女神がガイアの言葉に返せないでいると
「目的は一つ、お前たちモイラ三姉妹が持つ”希望の果実”を渡しなさい」
「果実を渡すわけには」「いきません」「ません」
三姉妹がばらばらと答えるとテュポーンは雄たけびをあげた
「グオオオオオオオオオ!!!」
雄たけびは嵐となりオリュンポス神殿を吹き飛ばす勢いで大風が巻きおこった。
風の強さに耐えきれず吹き飛んだ三姉妹をガイアは見下ろし、
「はやく渡せ!テュポーンをけしかけても良いのだぞ」
三姉妹は顔を見合わせガイアの要求にしぶしぶ答え、黄金色に光り輝く果実を渡した。
「おお、これが希望の果実・・・」
ガイアは輝く果実を手に取ると、テュポーンの口に投げ入れた。
「さあテュポーンよ願いを唱えろ!」
「グオオオオオ!!ォォォ・・・ォ・・・」
果実を口に入れたとたん、荒れ狂っていた嵐は力を失いそよ風に変わっていた。
なんだ?何かがおかしい・・・そうガイアが感じた瞬間、柱の陰から大きな翼を背に生やした神が飛び出した。

「作戦成功」
「貴様は・・・ヘルメス!!?」

希望の果実と絶望の果実

ガイアは驚きの声を上げテュポーンとヘルメスを交互に見やった。
苦しそうに頭を抱え首を振るテュポーン。
「貴様・・・テュポーンに何をした!あの果実はなんだ!?」
「すり替えておいたのさ」

すりかえたヘルメス

ヘルメスは腰元の鞄から金色に輝く果実を取り出し見せる。
「テュポーンが食べたのは全ての願いが叶う”希望の果実”じゃあない、全ての願いを失う”絶望の果実”だ!」
「なっ・・・」
まんまと一杯食わされたガイアは怒りの余り震えだした。
「テュポーン!!」
ガイアは怪物の名を呼びオリュンポス神殿を指さした。
「お前の残った力で神殿ごとこの忌まわしい山を打ち砕いてやれ!」
「グオオオオ」
令を受けたテュポーンは長大な腕をなぎ払うように振り神殿を攻撃した。
大きく爆発するように舞い上がる砂埃。だが腕は振りぬくことはできなかった。

「そうはさせない」

大河の如く長大な腕の先に、その悪意を止める男がいた。
稲光が体を包み、黄金の鎧を身に着けた全能の神ゼウス。
「オリュンポスを舐めるなよ」

ゼウスとテュポーンの最終決戦が始まった。

一方、洞窟に残されたパン
「俺の出番は?終わり?」

次回、たぶん最終回

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