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『深津式プロンプト読本』に見るパターン・ランゲージ的発想


深津貴之著『ChatGPTを使い尽くす!深津式プロンプト読本』(日経BP)を読みました。この本は、単なるプロンプト集ではなく、ChatGPTを効果的に使うための対話方法の基礎を学べるガイドです。既にネットなどで見かけた情報も含まれていましたが、体系的に整理されていて、理解が深まりました。実際にプロンプトを考える際、すぐに活かせると感じます。特に面白いと感じたのは、この本の構成やアプローチに、井庭崇さんの「パターン・ランゲージ」の考えとよく似た要素がある点です。

「パターン・ランゲージ」とは、特定の状況や課題に対する解決策をパターンとして抽出し、誰もが簡単に応用できるように言語化したものです。井庭さんの考え方では、複雑な問題を解決するための「型」を共有することで、多くの人が自身の文脈に応じて創造的な対応ができるようになります。深津さんの本にも、こうした「パターン・ランゲージ的発想」が見受けられます。それは、「ChatGPTとの対話における効果的なパターン」を提示し、ユーザーがそのパターンを応用して、より良い応答を引き出せるようにしている点です。

そこが他の多くのChatGPT本と異なる点です。研究者やプログラマー向けの理論的な解説書でもなければ、すぐに使えることに特化したマニュアル的な内容でもないです。その中間の「中空の言葉」(井庭)でChatGPTのことを語ることにより、読者は自分の経験や文脈に合わせて「状況」が理解しやすくなります。これを読んでいると、自分の似た「状況/経験」が想起され、それを基に「パターン」をアレンジして試してみたくなるのです。

深津さんが繰り返し語る以下の3つの経験則も、正に「パターン・ランゲージ」的な考え方に基づく大事な勘所かなと思います。

①「ChatGPTを役立てるには有料版の『ChatGPT Plus』である」

深津さんは、ChatGPTを最大限に活用するためには、有料版の「ChatGPT Plus」を推奨します。無料版と比較して、Plus版は最新のモデルを利用でき、応答速度や性能も大幅に向上しています。これにより、より複雑で多様なプロンプトに対しても迅速かつ的確な応答が得られます。ChatGPTを知的生産のツールとして使いこなすためには、このような高機能な環境が重要と感じました。(*わたしは「一か八か の賭けに出て」、有料版を使うことにしました。結果、大満足の体験をしています)

②「ChatGPTは『確率で続きを書くマシーン』である」

深津さんは「ChatGPTは確率で続きを書くマシーンである」という言葉をしつこいくらいに繰り返しています。ChatGPTは人間のように考えるのではなく、過去の膨大なデータから確率的に次の単語やフレーズを生成するモデルです。この理解を持つことで、AIの限界と可能性を適切に認識することができます。AIを使って何かを得る際には、その限界を理解した上で、AIをどう活用するかが重要な鍵となります。

③「大規模言語モデルのリサーチは推奨しない」

「大規模言語モデルのリサーチは推奨しない」という深津さんの意見にも共感しました。ChatGPTは強力なツールですが、情報の正確性や信頼性に限界があるため、研究目的で使う際には注意が必要です。AIはあくまでツールであり、その結果を無批判に信じるのではなく、自分の知識やリテラシーで判断することが重要です。この点について深津さんのアプローチは非常に現実的で、AIを使いこなすための指針として参考になります。

こうした視点から見ると、深津さんの『深津式』のプロンプト読本は、「パターン・ランゲージ」の考えを応用し、ChatGPTとの対話を一つの「技術」として扱い、誰もが使いやすくするための工夫が詰まっていると感じます。この本を通じて得た知識と知恵を今後の実践に役立て、より良いAIとの対話を楽しんでいきたいと思います。

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